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北朝鮮の首都平壌中心部にある高級外貨商店で先月末、高級液晶テレビが100台限定でディスカウント販売された。店頭には並び代行の人々が殺到し、大騒ぎとなった。

1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降最悪の食糧危機に見舞われていると言われている北朝鮮で、液晶テレビがバカ売れするという奇異な現象だが、やはり当初から言われていたように転売目的だったようで、平壌はもちろん地方の市場でもこのテレビが売られている。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

(参考記事:食糧難でも液晶テレビが飛ぶように売れる平壌の「格差社会」

平壌中心部の中区域の市場では、15インチ型が470米ドル(約6万1900円)で、19インチ型が550ドル(約7万2400円)で売られている。仕入れ価格にそれぞれ70ドル(約9200円)、100ドル(約1万3200円)を上乗せして転売しているのだが、おおっぴらに売ることはできず、看板だけ出して品物は別の場所に隠して取り引きしている。それでも1日で5〜6台は売れ、極端なゼロコロナ政策で沈んでいた市場の空気が久々に活気を帯びているという。

現在、平壌では電力がまともに供給されない状態だが、持ち物で生活水準を値踏みされる傾向が強いため、「良い暮らしをしている」と見せつけるアイテムとして最新型液晶テレビが人気だそうだ。また、何百ドルもするテレビが買えるほどの余裕がある人々は、自宅に発電用のソーラーパネルを設置している割合が高そうだ。

(参考記事:北朝鮮で普及進むソーラーパネル…改善しない電力事情が背景

また、金持ちの中でも、2〜30代の新婚夫婦が、主顧客層となっている。

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「家を高級感があるように見せたいと考える新婚夫婦の欲求が高まっているが、今は中国からの貿易や密輸ができないため、(北朝鮮)国内で販売される最新型液晶テレビに目を向ける」
「転売価格がいくら高くても氣にしない階層もいる一方で、購入を考えることすらできない階層もいて、市場ではとてつもない経済格差が如実に現れる」
(情報筋)

平壌市民の4割が、食べ物が底をついた「絶糧世帯」に陥ったと伝えられているが、その一方で数百ドルのテレビを平気で買う市民もいる。北朝鮮の格差社会がいかにひどいかを示す現象と言えよう。

(参考記事:北朝鮮「首都市民の4割が飢餓状態」の衝撃情報

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液晶テレビは、地方の市場でも売られている。

江原道(カンウォンド)の情報筋は、「液晶テレビを積んだトラックが平壌から元山(ウォンサン)にやって来た」という噂が広がったが、それからしばらく何の動きもなかったものの、1週間して葛麻(カルマ)市場で出回るようになったと伝えた。その価格は、平壌の市場よりさらに高い500ドル(約6万5800円)だ。

開城(ケソン)の情報筋も、南門(ナムムン)市場の電化製品売り場に今月5日の午後、15インチ型テレビが平壌から入荷したと黒山の人だかりができたと伝えた。これを500ドルで購入して、黄海南道(ファンヘナムド)や黄海北道(ファンヘブクト)の軍人舎宅に出向いて転売すれば、さらに1割の儲けが出るという。

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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の一般兵士は深刻な食糧不足に苦しめられ、多くの軍官(将校)の暮らしも追い詰められていると伝えられているが、一方で500ドルもするテレビを買う軍官もいる。民間人のみならず、軍でも格差社会になっているということだ。

(参考記事:北朝鮮「せめて風呂に入れて」ある女性兵士の叫び