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北朝鮮の首都・平壌では、市民の4割が、食べ物が底をついた「絶糧世帯」に陥ったとされ、市当局が緊急の食糧配給を行うほど状況がひっ迫している。しかし、そんな中でも、浮かれた暮らしをしている人々がいる。

(参考記事:北朝鮮「首都市民の4割が飢餓状態」の衝撃情報

現地のデイリーNK内部情報筋によると、平壌市内中心部にある高級外貨商店の楽園(ラグォン)百貨店が、1月26日の午前10時半から、液晶テレビの緊急販売を行った。

価格は15インチ型が400ドル(約5万2000円)、19インチ型が450ドル(約5万8600円)。コロナ禍が始まった直後の2020年春より100ドル(約1万3000円)も安い割引価格だ。合わせて100台の限定販売だったが、百貨店のオープン前から長蛇の列ができ、あっという間に売り切れてしまったという。

購入者はトンジュ(金主、ニューリッチ)だが、彼ら自身が列に並んだわけではない。カネで雇った人々を代わりに並ばせたのだ。日本で言うところの「並び代行」を使ったということだ。

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百貨店は販売当日、1階に臨時のブースを設け、そこで現金を受け取って伝票を切り、それを持って売り場で現物を受け取らせるという旧共産圏で一般的に見られた方式で販売を行った。当初は北朝鮮ウォンでも支払い可能としていたが、急に外貨しか受け取らないと言い出し、最後にはどういうわけか価格を40ドル(約5200円)も上げると言い出したとのことだ。

今回販売された液晶テレビだが、情報筋の説明によると、2019年末に大同江テレビ受像機工場が、中国遼寧省の投資家からの投資を受け、中国からの輸入部品の組み立てによる「HC」というブランドで生産を始めたものだ。

製品は中国に輸出し、国内の外貨商店でも販売していた。しかし新型コロナウイルスの大流行を受けて、北朝鮮当局が人のみならず物の出入りも完全に遮断したため、部品の調達ができなくなり生産も輸出もストップしてしまった。

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昨年末になってようやく部品の輸入が再開され、まずは製造途中だった製品を完成させた。半完成品のまま3年近くも放置されていただけに、正規価格の販売は見送り、2月8日の朝鮮人民軍(北朝鮮軍)創建日と16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)を控えて、平壌市民を対象に割引販売で「特別販売」したのだ。

その目的は、国内で流通する外貨を吸い上げることにあるとされる。

購入者は、品質を確認するため売り場でコンセントに繋いで動作をチェックするなどしたが、特に問題はなかったようだ。

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さて、販売された100台の液晶テレビだが、多くは市場で転売されたとのことだ。トンジュたちはそもそも、転売目的で、並び代行を使ってまで液晶テレビを購入したのだ。それでもかなりの儲けになるのだろう。

(参考記事:コロナ禍の北朝鮮で新型テレビがバカ売れ…進む格差拡大

また、極寒の中で並び代行を行い、わずかな賃金を稼ぐ人が少なからず存在するのも、経済難の深刻さを反映したものと言えよう。

(参考記事:ビールの「転売ヤー」となってコロナ禍を生き抜く北朝鮮の貧困老人