北朝鮮の「人工衛星打ち上げ」と称する長距離弾道ミサイルの発射実験計画について、日米韓に中国までもが一斉に批判している。発射が実施されれば、1月に強行された核実験の問題と合わせ、「より強い制裁」を求める国際世論が高まるのは間違いないだろう。

しかし考えて見れば、北朝鮮に対する国際世論は、これまでも十分に険しかった。4回目の核実験直後には、日本のメディアは国連安保理がすぐにも過去最強の制裁決議を下すかのような報道ぶりだった。しかしフタを開けてみれば、米国と中露の意見の溝はかつてなく深い。

そして、強い制裁を「やる」「やらない」ですったもんだしていたところに、今回の「発射宣言」である。これではまるで、国連安保理の方が北朝鮮に狙い打ちされているように見える。

金正恩第1書記が当面、米国などとの外交交渉など求めていないのは、もはや明らかだ。それなのに、「圧力をかけて対話の場に引き出そう」などと考えてみても、空回りを続けるだろう。

だからと言って、「ムダだから制裁を止めろ」と主張したいわけではない。どうすればまともに圧力が作用するか、まずは良く見直すべきだということだ。

そもそも米国や日本などは、北朝鮮が残忍な独裁体制であるという前提を忘れがちではないか。経済制裁に苦しむ中で民意が体制から離反し、あるいは国際社会への復帰を求めて政府への反発が強まるのは、それなりに民主主義システムを備えたイランのような国であればこそだ。

国民が反発を表す前から捕まえて投獄してしまう北朝鮮のような国で、そんな現象は起こりようがない。

では、金正恩氏の暴走を止めるために、何も打つ手がないのだろうか。そんなことはない。

想起して欲しいのは、抑圧されている北朝鮮の国民の利益と、地域の安定を望む周辺各国の人々の利益は、大きなところで一致しているということだ。

厳しい経済難からの脱出を望んでいる北朝鮮の国民は、周辺各国との経済協力を何より望んでいるはずだ。核開発を放棄することで確実に経済協力を得られるとなれば、ほとんどの北朝鮮国民は賛成票を投じるだろう。

問題は、北朝鮮の体制にはそうしたシステムがないということだ。つまり、北東アジアの安定のためには、北朝鮮には民主化――体制変更(レジーム・チェンジ)が絶対に必要なのである。

今後、国際社会が北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するために圧力をかけるというのなら、その延長線上にはレジーム・チェンジをハッキリと見据えるべきだ。そうしなければ、どんな努力も無駄になる。

もちろん、レジーム・チェンジには膨大なコストと時間がかかるだろうが、永久に無駄な努力を重ねるよりはマシだ。「急がば回れ」の一言に尽きる。

日本政府はいま、ストックホルム合意にともなって解除した独自制裁の一部を復活させることを検討しているかも知れない。自民党は昨年の段階で、再入国禁止の対象者拡大など13項目に及ぶ制裁強化案をまとめている。

とりわけ、日本は安保理の非常任理事国として席を占めているだけに、対北制裁でリーダーシップを示す責任があるはずだ。

それでも、この程度の圧力では、北朝鮮は何ら痛痒を感じないだろう。レジーム・チェンジを目指さないどんな圧力も、国際社会に背を向けた北朝鮮を突き動かしはしない。

ウソだと思うなら、今すぐにでも独自制裁の復活をやってみたらいい。おそらく大手新聞は、お付き合いで「強力制裁」の見出しを掲げてくれるだろう。

しかし私には、その紙面を読んでせせら笑う金正恩氏の声が、今にも聞こえてきそうだ。

(文/ジャーナリスト 李策)

    関連記事