北朝鮮で裏コンテンツとして幅広く流通している韓流ドラマは、言葉ファッションに多大な影響を与え、北朝鮮社会や住民の意識を大きく変えたが、ここへきて新たなトレンドを生みだしつつある。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋がその現状を探った。

平安南道粛川の魚介鍋食堂の前で休憩している人々
平安南道粛川の魚介鍋食堂の前で休憩している人々

かつての北朝鮮では、食事は「家で食べるもの」で外で食事をする、つまり外食の習慣はなかった。会議、出張などで「仕方なし」に外食を摂っていたが、そうした風潮が過去のものとなり、最近では、あえて外食に出かけることが当たり前の光景になりつつある。平壌で幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)が有名レストランで食事をする風景は見られたが、この習慣が地方の幹部や庶民にも広まったのだ。

さらに、野外での食事もちょっとしたブームだ。幹部やトンジュは焼き肉、カネのない庶民はお弁当を作って外で食べる。ただし、こうした「外食」を表す単語が北朝鮮には存在しなかったが、韓流ドラマをきっかけにに広まった。

どうやら韓流ドラマで聞きかじった「外食」という“新語”を一部の人々が使い始め、他の住民も使うようになって拡散したようだ。今では若い男女が、外食をして愛の告白をする「韓国のような」シーンも珍しくない。

中高生も、「学生の奉仕ノルマであるウサギの皮を持ってこれなかった」などの理由で先生に叱られたら、憂さ晴らしに「外食に行こう」と友達を誘い、人造肉飯(大豆でできたソイミートにご飯を入れたもの)を食べに行く。韓国や日本の中高生の放課後と全く変わらない。

こうした習慣が広まり、外食は「圧迫と苦悩の日常」から解放してくれる「プチ贅沢」という認識がすっかり定着した。

平壌で人気のグルメスポットは、冷麺の「玉流館」「清流館」、そして犬肉の「平壌犬肉館」だ。住民たちは、よそ行きの服を着て家族や親戚とそろって出かける。人気のレストランだけあって順番待ちの列も長いが、美味しいものにありつけるとあって、みんなニコニコ顔だ。また、牡丹峰(モランボン)など景色のいい名勝地で、お弁当を広げながらの外食も楽しむ。

平壌以外の地方でも外食文化は、広まっている。個人経営の食堂で外食を楽しみ、日が暮れれば屋台で豆腐をつまみに一杯やる。食事も楽しめることから、家族連れも多い。お年寄りは長椅子に腰掛け、ポップコーンひと袋をつまみながらおしゃべりに明け暮れる。

苦しい生活のなかのささやかな楽しみ、そして幸せのひとときなのかもしれない。

北朝鮮当局は、韓流ドラマの取り締まりの厳格化し、簡単に視聴できなくなっているが、韓流ドラマが北朝鮮に与えた「幸せのかたち」は、人々から消えることはないだろう。

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