携帯電話を使う北朝鮮の女性。(本文とは関係ありません) ©Roman Harak
携帯電話を使う北朝鮮の女性。(参考写真) ©Roman Harak

緩和されていた携帯電話監視の強化に乗り出す

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北朝鮮は、携帯電話を使った中国、韓国との違法通話が体制を揺るがす脅威と見ている。これまで取り締まりのために、高性能電波探知機を導入したり、一度逮捕した人をスパイ活動をさせるほど「携帯電話による海外通話」にナーバスになっている。

【参考記事】
北朝鮮国境警備隊、ドイツ製電波探知機で捜査を展開中
北朝鮮当局が「秘密の携帯通話」で逮捕した人々をスパイに仕立てて仮釈放

その一方で、国内の合法的な携帯電話に対する監視をそれほど強くなかった。ある脱北者は韓国の月刊誌「月刊朝鮮」に対して「2012年末から携帯電話への統制が緩くなり、携帯電話の使用が奨励されている」と語っている。

ところが、その方針が最近変わったと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えたている。平安北道(ピョンアンブクト)の内部情報筋はRFAに対して次のように語った。

「保衛部が昨年11月に『1080常務』という組織を立ち上げて、北朝鮮国内で合法的に使われている携帯電話の検閲を始めた」

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「この組織は海外との違法通話を取り締まる『1118常務』や『109常務』とは全く別の組織だ」

「この『1080』は金正恩氏の誕生日の1月8日に平穏と安全を象徴する『0』と入れて名付けられたものだ」

強力な権限を持った私服取締要員が活動

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の別の内部情報筋はRFAに対して次のように語った。

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「他の保衛部の要員のように私服を着て活動しているが、党機関幹部を除く司法機関、行政機関の幹部、一般住民の携帯電話を検閲、没収できる強力な権限を持たされている」

「秘密裏に組織されたが一部幹部や住民の知るところとなり、国内の携帯電話も安心して使えなくなったと不安に思っている」

北朝鮮携帯ユーザー240〜500万 監視は無理?

しかし、北朝鮮国内の携帯事業を合弁で行っているエジプトのオラスコム社の関係者が米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)に語ったところによると、加入者数は240万人に達している。これは北朝鮮の人の10人に1人が携帯電話を持っているという計算になる。仮に3人1世帯とすると3文の1の割合で、決して少なくない数字だ。

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別の脱北者は月刊朝鮮に対して「人口300万の平壌ではほとんどの人が持っている。国全体では500万に達するのではないかと思っている」と語った。

もちろん、当局に目を付けられた人物の盗聴や監視はあると見るべきだ。しかし、240万〜500万の携帯電話全てを盗聴しようとしたら莫大なコストもかかるし、相当なヒューマンリソースを投入しなければならない。

そもそも北朝鮮当局が携帯電話を普及させる目的は、携帯代金や通話料で相当な収入が見込めるからだ。全ての携帯電話を盗聴することは事実上、無理だろう。