北朝鮮国営の朝鮮中央通信は26日、孤児院と中学、高校が併設された施設である平壌中等学院の卒業生110人が、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)への入隊を嘆願(志願)したと伝えた。
一般的な高等中学校(高校)の卒業生が軍に入隊する割合は3割に満たないが、中等学院の場合はほとんどが軍に入る。形式上は嘆願だが、実質的には強制されたものだ。その内情を、韓国のサンド研究所が運営するサンドタイムズが伝えた。
内部情報筋が述べた、中等学院卒業生の軍入隊の理由はこのようなものだ。
「親のいない孤児たちが集まった平壌中等学院の卒業生のほとんどを軍に、しかも米韓と対峙する最前線に送り込んでいる。何が起きても後々問題が起きないからだ」
中等学院の卒業生は、都合の良い労働力として、突撃隊(半強制の建設ボランティア)に駆り出されることが多かった。2019年に脱北した平壌出身のハン・ジョンエ(仮名)さんは語る。
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「マンション建設の労働力が不足したため、孤児たちが早朝から現場に出て建設資材を運ぶ仕事をさせられていた。休みの時期には幼い孤児までも工事に動員されていた」
北朝鮮の建設現場では、安全設備、装備の不足、無理やり工期に合わせる「速度戦」などが原因で、労災事故が多発している。怪我をしたり亡くなったりした場合、補償問題が発生するが、身寄りのない孤児は、そんな心配のない「都合の良い」労働力としてこき使えるのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし、現場からの脱走も多い。両江道(リャンガンド)の情報筋は、三池淵(サムジヨン)市の再開発工事に動員された孤児の多くが、寒さと空腹に耐えかねて脱走し、コチェビ(ストリート・チルドレン)に戻ったと証言した。
(参考記事:「生きていてもしょうがない」北朝鮮の孤児たちの深い絶望)だが、脱走が重大な犯罪となる軍ならばその心配はない。孤児たちは、軍の中でもキツいと言われる、韓国との軍事境界線に接する地域に駐屯する第1、第2、第5軍団に集団で送り込まれる。
それ以上にキツいのは、ウクライナ軍との戦闘が繰り広げられているロシアのクルスク州だろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面韓国軍の合同参謀本部の27日の発表によると、ロシアに派遣された北朝鮮軍の将兵1万1000人のうち、約4000人が戦死、または負傷した。そのため、今年1月と2月に約3000人が追加で派兵された。
多くの若者が戦死しているという情報は北朝鮮国内に広がり、兵役逃れの風潮が強まっている。また、自分の息子がどのように亡くなったかなどの情報が与えられないことから、遺族の不満も高まっている。
(参考記事:「捕虜になった北朝鮮兵」家族はこうして殺される)高級中学校には昨年から、軍に嘆願することを前提とした「嘆願学級」が教育省の指示で設置されたが、「大学進学と企業所への就職の機会を剥奪するもの」だとの不満を口にする人も現れている。
だが、孤児ならば次々に送り込み、亡くなったとしても騒ぐ家族はいない。
当局が孤児を突撃隊より軍に送り込むように方針を変更したのは、このような背景があると思われる。