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方向が定まらない北朝鮮の農業政策。

農民の「やる気」を削ぐ集団農業を堅持しながら、農民に収穫の一部を与えることで生産性を高めようとする「圃田担当責任制」が導入されるも、今年に入ってから、従来の集団農業に回帰する流れとなっている。

(参考記事:北朝鮮、集団農業に回帰でインセンティブ制度廃止か

しかし、肥料や営農資材、農業機械、燃料などが国から支給されるのは、ごく一部の農場だけ。ほとんどの協同農場は、自主的に予算調達を迫られている。そんな中、農地の一部を外部に貸し出す動きが広がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、殷山(ウンサン)郡の首陽里(スヤンリ)協同農場が5月初旬、トンジュ(金主、ニューリッチ)に「非耕地」を貸し出し、その代金を受け取ったと伝えた。

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この代金で、揚水ポンプとトラクターに使うガソリンや部品を購入し、田起こしを行ったとのことだ。田植え前の必須作業だが、当局からガソリンや部品を自主調達するように指示されたため、このような手段を使ったというわけだ。

北朝鮮の協同農場には、国家計画(国の定めたノルマ)に含まれる「耕地」と、含まれない「非耕地」がある。後者は農場の土地として登録はされているものの、土壌の酸性化などで耕作に向いておらず、国家計画から除外されたものだ。

非耕地の貸し出し期間は1年で、1ヘクタールあたり200ドル(約2万8000円)。首陽里協同農場の400ヘクタールのうち、50ヘクタールがこのようにして貸し出された。単純計算で1万ドル(約140万円)の収入が得られたということだ。

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以前は、ヤミ金業者から借金をして営農資材を購入していたが、金利が高く、トラブルも多かったため、より安全なこの手法が使われるようになったという。

(参考記事:コロナ鎖国下の北朝鮮で増殖する「ヤミ金」トラブル

なお、非耕地の判定は毎年、地元行政機関の土地課が行う。1ヘクタールあたり1トンの穀物が生産できない土地は、酸性化しているとして数年間休ませるように指示する。

トンジュは、このような畑に肥料をまいて酸性を中和した上で、すいかや落花生など商品作物を栽培し、都会の高級レストランや市場に卸して儲けているという。つまりこうすれば、カネをかけて土壌改良をして、別の作物を植えることで連作障害を防ぐことができるのだが、それをしない(できない)のが、国の計画にのみ従って生産を行う集団農業の硬直性だ。

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現在はどうなっているかわからないが、一時期、このような形で儲けて富農になる人もいた。過度な富の蓄積を嫌う当局の意図とは異なり、自力更生という名前の予算調達の丸投げが、このような状況を招いているのは実に皮肉だ。

(参考記事:足元のカネを掘れ!…「イチゴ栽培」で儲ける北朝鮮の人々

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋は、定平(チョンピョン)郡でも同じような形の畑の貸し出しが行われていると伝えた。

元をたどれば、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころに、国からの肥料や営農資材の供給が途絶えたことをきっかけに始まった畑の貸し出し。もちろん違法行為で、密かに行われていた。

ところが、その後に大っぴらに行われるようになり、今では逆に、農場の幹部がトンジュを訪ねて「畑を安く貸すから賃料が欲しい」と持ちかけるようになり、1人あたり平均5ヘクタールを貸し出すようになっている。