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韓国のネット上では「今年の7月は4日間を除いて毎日雨が降る、史上最悪の梅雨になる」との情報が流れている。同国気象庁は「根拠が薄い」と否定しているが、昨年の6月末から7月初め、8月には連日の大雨で被害が続出。中でも、8日から11日まで線状降水帯による大雨でソウルの江南(カンナム)一帯が浸水、半地下住宅の浸水などで合計14人の死者を出すなど甚大な被害が発生した。そんなこともあってか、真実味を持って受け止められているようだ。

これは、軍事境界線を挟んで韓国と接している北朝鮮にとっても他人事ではない。軍事境界線に接する黄海南道(ファンヘナムド)と隣の黄海北道(ファンヘブクト)では、上述した8月の大雨で田畑や民家に多くの被害が出た。

(参考記事:大雨が降るたびに被害を受ける北朝鮮の農地

これら地域を含めた北朝鮮の西海岸では、先週から「田植え戦闘」が始まっている。国は、異例のバックアップを行い、増産を目指しているが、防災インフラが脆弱な北朝鮮だけあり、豊作になるか否かはお天気次第とも言えよう。黄海南道のデイリーNK内部情報筋が現地の様子を伝えた。

黄海南道当局は全国に先駆け、「飯を食う者は大人子どもを問わず、皆、田植えに総動員せよ」という指示を下した。朝鮮労働党はこの地域の農場に農業機械を大々的に提供したが、それに合わせて動員する人員を減らし、その分だけ必要となる燃料の半分以上を供給することにした。機械に任せられるところは機械に任せ、そうでない農場にできるだけ多くの人員を動員する形にするようだ。

(参考記事:「金正恩が贈った農業機械5500台」農民はなぜか冷たい視線

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特に今年は、祖国解放戦争勝利の日(戦勝節、朝鮮戦争休戦協定締結の日)70周年を迎える。「大豊作で迎えようとの熱意を持って田植え戦闘に臨め」と当局は強調している。また、朝鮮戦争中に人と牛の力だけで大豊作を達成し、最前線に送ったという農民の犠牲精神を見習い、今年の農業がうまくいくように党組織が政治思想事業(思想教育)の先頭に立つように指示した。

思想教育で大豊作をもたらそうという発想が、いかにも北朝鮮的だ。

(参考記事:「聞くだけでイライラ」金正恩の思想教育に国民は限界

一方、近年の凶作について、コロナによる移動制限で自由に人員の動員ができなかったことによるものとし、そのダメージは年末まで続くとして、今年こそは豊作にして、食糧不足を克服しようとも訴えかけた。

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さて、今年7月頃からかなりの確率で、ペルー沖の海水面の温度が上昇する「エルニーニョ現象」が起きると言われている。これにより、朝鮮半島の夏は降水量の増加が起きると言われている。

2020年から昨年まで、エルニーニョとは反対のラニーニャ現象が起きていたにもかかわらず、降水量が増加したことは、エルニーニョとなる今年の夏は、さらに降水量が増える可能性も考えられる。

北朝鮮農業のネックとなっていた資材や燃料の不足が、国からの支援である程度は解消するとしても、天候により帳消しにされる可能性も考えられるのだ。それを防ぐためには、さらに大規模な防災インフラが必要となる。これが比較的整えられている韓国でも、たびたび災害が起きていることを考えると、小手先の対策ではどうしようもないかもしれない。

(参考記事:毎年凶作の北朝鮮農業、何が問題なのか?