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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、金正恩総書記が、5500台もの農業機械を穀倉地帯である黄海南道(ファンヘナムド)に贈ったと報じた。以下、記事から一部抜粋する。

金正恩総書記が黄海南道に配慮した農業機械伝達の集い

【平壌9月27日発朝鮮中央通信】偉大な党中央の思想と指導に忠実に従ってわが労働者たちが製作した近代的な農業機械が西海穀倉にすばらしい壮観を広げた。

国の一番大きな農業道である黄海南道を重視し、農業生産で旗印を掲げていくように格別に関心し、大いなる愛を重ねて施す敬愛する金正恩総書記は、軍需工業部門で新しく製作した5500台の農業機械を道内の各農場に配慮してやった。

わが国家の全面的繁栄の前途を明示し、社会主義農村の飛躍的発展のための新しい農村革命綱領を示した金正恩総書記は、われわれの革命的工業である軍需工業部門が総決起して農業部門をはじめとする人民経済部門を支援するように賢明に導いた。

党中央の呼びかけを胸に刻んだ軍需工業部門の労働者と活動家は、生産突撃戦を繰り広げて数千台の能率の高い新型の移動式稲総合脱穀機、小型稲収穫機、トウモロコシ総合脱穀機、総合土壌管理機械を製作、完成した。

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金正恩総書記が黄海南道に配慮した農業機械伝達の集いが25日、海州広場で行われた。

広場と周辺道路は朝鮮式の近代的な農業機械でいっぱいであった。
(中略)
集いの後、参加者と海州市民は農業機械を見て回った。

黄海南道の人民は、歓喜と激情にかられて歌い、踊った。---

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だが、実際のところ、現地住民は大量の農業機械を目の当たりにして、冷めた表情を見せていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

先月25日に海州(ヘジュ)市広場で農業機械伝達の集いが行われた翌日朝から、大量の農業機械が各地の農場へ向けて出発した。あまりにも台数が多い上に、道路事情が悪いため、現地に到着するまでかなりの時間がかかったとのことだ。

農業機械を受け取った各共同農場では、伝達式と「元帥様(金正恩氏)に捧げる忠誠の使いの集い」が行われたが、多くの住民の不満を買った。

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載寧(チェリョン)郡では、郡内すべての里(末端の行政単位)の朝鮮労働党委員会のイルクン(幹部)と一部の農民が、秋の収穫が忙しい中で、午前9時に邑(郡の中心地)に呼び集められ、5時間も待たされた上で、ようやく行事の開始にこぎつけた。

朝鮮労働党載寧郡委員会の責任秘書(郡のトップ)は「農民たちを苦しい労働から解放するために、元帥様が新しい農業機械を贈ってくださった。元帥様の愛とご配慮に、農民はコメで応えなければならない」と述べた。参加者は、忠誠の誓いを行って、ようやく解放された。

情報筋は、「ただでさえ人手が不足して猫の手も借りたい状況なのに、長時間拘束されて時間を無駄にしては、文句が出ないはずがない」と、現場の空気を伝えた。

実際、農民の間からは「黄海南道で行事をしたのだからそれで充分だ、なぜ郡でもやらなければならないのかわからない」「忙しい人を丸一日拘束して、なぜ忠誠の誓いなどやらせるのかわからない」などと言った声が上がったという。

道内の安岳(アナク)郡では、行事の後に、各農場に農業機械が割り当てられたが、一部地域では、機械を運転するドライバーが不足し、翌朝まで待たされたという。問題はそれだけで終わらない。

「機械で農業ができれば楽でいいだろうが、以前に使っていた農業機械も部品が手に入らず廃棄されたものが多い。国が新しい機械を贈ってくれても、それを使いこなせる人材も、電気や燃料も不足しているのが実情で、どれだけ活用できるかは今後を見てみなければわからない」(情報筋)

農業機械の部品の多くは、中国からの輸入に頼っているが、2020年1月からのコロナ鎖国で部品が入荷しなくなり、使えなくなったものも多い。また、国産の部品は質が低い。農業機械のみならず、肥料、ビニール膜など様々な営農資材を輸入に頼っていることから、コロナ鎖国は北朝鮮農業に深刻なダメージを与えた。

(参考記事:コロナ鎖国で部品不足…北朝鮮で農業機械の7割が稼働できず

一部では、鎌ですら不足する状況に陥っている。農業機械を大量に送り込むのは、いいプロパガンダとなるが、実際に現地で求められているのは機械そのものより、従前から所有している機械の部品、燃料、その他の営農資材などだ。

(参考記事:金正恩氏が重視する麦、収穫遅延の理由は「鎌」の不足

さて、農業機械が贈られた黄海南道と並ぶ穀倉地帯であるお隣の黄海北道(ファンヘブクト)からは、「何ももらえなかった」ことに不満の声が上がっている。

銀波(ウンパ)郡の情報筋は「わが国(北朝鮮)の農業生産においては黄海南道が占める割合が大きいが、黄海北道もそれに劣らぬ農地を有している。隣の黄海南道にだけ5000台を超える機械を送り、わが黄海北道には1台も贈ってくれないのは、気分のいい話ではない」と述べた。

そんな中、黄海北道、江原道(カンウォンド)にも農業機械を贈ってくれるという噂が出回っている。北朝鮮では、正確な情報が伝えられないことから、噂が噂を呼び、「期待の暴走」が起きることがしばしばある。それらは概ね裏切られることになり、住民のさらなる不満へとつながる。

(参考記事:「6月に韓国から食糧配給が!」街の噂が金正恩氏を苦しめる