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北朝鮮の首都・平壌は「選ばれし者」の都市だ。成分(身分)や思想に問題がないと認められた人以外の居住は認められず、訪問するだけでも特別な許可証が必要だ。生活レベルも他の地方とは比べ物にならないほど高い。

そんな平壌の中にも、超えられない壁が存在する。「30号対象」と呼ばれる市内中心部の10区域の市民と、それ以外の8の区域と2つの郡の市民を意味する「410号対象」を隔てる壁だ。高位幹部、上流階級である前者は食糧配給、電力供給など様々な面で優遇されている反面、後者は差別的な扱いを受けている。

(参考記事:北朝鮮「金正恩就任10周年記念」で大規模な食糧配給を実施

郊外から中心部への移住も規制されているのだが、違反事例が後を絶たず、当局が取り締まりに乗り出したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

平壌の情報筋は、許可なく市内中心部に移住した住民に対して、調査が行われていると伝えた。この調査は、首脳部のある平壌の中心区域の行政秩序を正せとの中央の指示に基づき始められた。

30号対象に分類される情報筋の住んでいる普通江(ポトンガン)区域の新原洞(シノンドン)のマンションにも、410号対象の人が住んでいたが、今回の調査でバレてしまい、元住んでいた寺洞(サドン)区域の松新洞(ソンシンドン)に追放された。

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別の情報筋も、30号対象の人が住む船橋(ソンギョ)区域に、410号対象に分類される人が違法にマンションを購入して住んでいたが、摘発されてマンションを没収された上で、元住んでいた地域に追放されたと伝えた。

さらに別の情報筋は、同じ平壌市民の間でも市内中心部在住か郊外在住かによって、自分が「上級市民」であるか「下級市民」であるかを、区別して認識するようになっていると伝えた。そのため、郊外に住んでいる人は、カネを稼いで中心部に移住し、身分上昇を図ろうとする。

(参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」

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その方法はと言うと、平壌市人民委員会(市役所)に1万ドル(約121万円)以上の「忠誠の資金」(上納金)を納めることだ。これなら、410号対象でも市内中心部への居住が認められる。また、それだけのカネがなければ、人民委員会幹部に2000ドル(約24万3000円)ほどのワイロを掴ませて、密かに中心部に移住するという。

しかし、居住の自由が認められていない北朝鮮では、たとえ上納金を積んでもワイロを支払っても、お上のさじ加減一つで追い出されることが考えられる。

(参考記事:障碍者という理由だけで追放される「革命の首都」平壌

万民が平等のはずの北朝鮮だが、実際は事細かく身分が分けられた、世界的に類を見ない身分制社会なのだ。