北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)の学校が、朝鮮労働党にある男性の入党を推薦した。推薦は、平素の思想や言動が「良好」だとみなされてこそ受けられるものだが、決して評判がいいとは言えない男性がその対象になったことで、疑問の声が上がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が、現地教育部門の情報筋の話として、その経緯を伝えている。
今年1月、市内のある専門大学に対して朝鮮労働党の入党割り当てが1枠与えられた。70〜80人いると思われるこの大学の教職員のすべてが、勤務年数が長く評判の良い人に与えられるだろうと予想していたが、実際に与えられたのは、実績もなく評判も良くない教員だったという。
大学に在学中の除隊軍人の学生のほとんどは、兵役が満了する前に入党推薦を得て党員になっており、入党済みの教職員と共に党員会合に参加する。未入党の教職員は、学生ですら参加する会合に呼ばれないことを、とても恥ずかしいことと感じているという。
そのため、特に男性の教職員は入党を希望するが、軍とは異なり、大学には入党割り当てが多くない。そのため、特別な功労を立てない限りは入党が非常に難しい。除隊軍人の場合、20代で党員になるのが普通だが、教員は勤続年数が10年を超えて40代となり、人望があっても入党が難しいのだ。
今回、評判の良くない人物に入党枠が割り当てられたことで、市党(朝鮮労働党清津市委員会)に信訴(告発)する人が現れ、市党の党員登録課が大学で教職員一人ひとりに会って意見聴取を行ったが、推薦は変更されなかったという。
教職員たちは、問題提起が握り潰されたことについて、当該の教職員が、初級党書記と党員登録課にワイロをつかませたからだと見ている。このようなことは今回が初めてではないとは言え、教職員の間では、初級党書記に対する非難が相次いでいる。
北朝鮮で、かつては当たり前のように行われていた贈収賄だが、ここ最近は取り締まりの強化でおおっぴらに受け取るのが憚られる状況となっていると伝えられていた。それが、また元通りの状況になったのかもしれない。
(参考記事:北朝鮮、警察官に「ワイロは受け取らない」誓約書を出させる)咸鏡南道(ハムギョンナムド)新浦(シンポ)の行政機関幹部は、私腹を肥やすために党のイルクン(幹部)が職権を乱用するのは昨日今日の話ではないとして、この幹部が所属する企業所でも、金正恩総書記から2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)の贈り物が入った箱を、ある作業班長だけが受け取った件をめぐり初級党書記が非難を受けていると明かした。
というのも、この作業班長が初級党書記を家に招いて接待し、その際に贈り物箱のやり取りがあったからだという。作業班長の妻は、海産物の商売を大々的に行っており、企業所で一番の金持ちと言われているが、ワイロのやり取りがあったのだろうと噂されている。
(参考記事:北朝鮮農民「働く気が失せた」金正恩の “ひどい贈り物” が逆効果)
2016年12月、党のイルクンの官僚主義と不正腐敗をなくすよう強調された朝鮮労働党第1回初級党書記大会が開かれた。そして先月、その第2回大会が5年ぶりに行われたが、情報筋は「こんな大会が何十回開かれても、各職場で帝王的地位を占めている初級党書記などの党イルクンの職権乱用を完全になくすのは困難だ」と嘆いた。
(参考記事:「欠点が厳正に批判された」北朝鮮で第2回初級党書記大会)