新法や新たな規制方針が示され、厳しい取り締まりが行われる。しばらくすると取り締まりが緩和され、取締官はワイロを見返りに違反行為をもみ消したり減刑したりするようになる。そして、法や方針は骨抜きされていく――。
あらゆる権力、権限がカネを生み出す源泉となる北朝鮮では、このような流れが繰り返されてきた。法を犯さなければ日常生活が成り立たないことも多い一般人民にとって、この手のワイロは一種の手数料のようなものだった。ところが、そんな状況に変化が生じつつある。
反社会主義、非社会主義行為の剔抉闘争が繰り広げられている中、当局は今年初の指示を各地域の安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)に下した。その内容は、収賄を厳しく戒めるものだった。平壌と咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
今月8日、反社会主義、非社会主義行為を取り締まる82連合指揮部は、上述のような内容の第1四半期法機関内部指針計画書を出した。
(参考記事:北朝鮮、「非社会主義」取り締まり組織を常設化か…内部文書を入手)それに基づき、10日、11日の2日間、取り締まりと統制を担当する安全部の人員全員から「取り締まり、法執行の過程で非社会主義行為(収賄)を行わない」「他の人員の非社会主義行為を知れば、すぐに(朝鮮労働)党委員会と上級に報告する」という内容の書類を作成し、党政治部に提出した。「ワイロは受け取らない」「同僚の収賄は報告する」という誓約書を取り付けたということだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面これに対して当局は「反社会主義、非社会主義行為に対する法的執行において、イルクン(幹部)は党的良心と無限の責任を発揮すべき」「イルクンは国家の法執行において些細な偏りもあってはならない」「内部に腐りきった反動思想と文化(韓流)を送り込もうとする敵どもの策動に警戒心を高め、徹底して摘発、粉砕しなければならない」などと指摘した。
かつては完全に保証されていた安全員、保衛員など司法機関従事者に対する食料配給だが、近年では度々遅配、欠配が起きている。彼らはワイロを得ることで生活を成り立たせていたが、それも難しくなるだろう。実際、ワイロのやり取りが難しくなっているとの情報もある。
(参考記事:「何を食えばいいのか」金正恩の処刑部隊でも不満増幅)