「ワイロと違法行為見逃し」のエコシステムが、復活するのだろうか。
北朝鮮の国境に接した地域では、多くの人々が違法な商売を行い、保衛部(秘密警察)や安全部(警察)、国境警備隊は彼らからワイロを受け取って見逃すことで収入としていた。
それを知っていた中央当局は、地方の商人や行政としがらみのない平壌の検閲チームを送り込み、厳しい取り締まりを続けた。そのため、従来のようにワイロを気軽にやりとりできる雰囲気ではなくなっていた。そこにコロナ鎖国も加わり、地域経済はすっかり疲弊してしまった。
(参考記事:長期化する非社会主義取り締まりで疲弊の度合いを深める北朝鮮国境地域)そんな中、地元の秘密警察は以前の利権を復活させようとしているようだ。
平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、平安北道保衛局が地元の人々に、南朝鮮(韓国)のカネだろうが、中国のカネだろうが、保衛部に手数料――つまりワイロを渡すならば、送金ブローカー業にも中国キャリアの携帯電話の使用にも目をつぶると暗に示したと伝えた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面保衛員は、元送金ブローカーたちを訪ね歩き、「咸鏡北道保衛局は、送金ブローカーが儲けを保衛部と山分けにするならば、いくらでも活動を大目に見る」と説得に乗り出しているとのことだ。
保衛員は、こんなことも言っているという。
「今回の咸鏡北道保衛局の措置は、国の承認に基づくものではない。咸鏡北道が生きていくために、仕方なく選択した道だ。今年、道保衛局が課された外貨稼ぎの課題(ノルマ)を達成するには他に方法がない。ブローカーも保衛部も助かって一挙両得ではないか」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面こんな話を持ちかけられた側の反応は、極めて冷淡だという。保衛部が私服を肥やすだけ肥やした上で、逮捕する目論見だろうと見て、鼻で笑っているとのことだ。
「ブローカーにくっついていた保衛員は、私服を充分に肥やした上でスパイという罪名をなすりつけて捕まえて殺したり教化所(刑務所)送りにしている。そんな連中を信じられるわけがない」(現地住民)
(参考記事:北朝鮮保衛局で「密室の鬼畜行為」…金正恩命令でも止まらず)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面保衛部とコネで繋がっていた元ブローカーも、今ではコネが切れてしまい、いくら説得してもまず動くことはないだろうと情報筋は見ている。
外貨稼ぎのノルマも達成できず、保衛員の生活も保障もできなくなった保衛部は、引くに引けない状況に陥っている。今さら「元の田沼の濁り恋しき」と言ったところで、魚は逃げてしまった後なのだ。
(参考記事:「韓国からのカネは受け取れない」ある女性を襲った恐怖体験)