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昨年1月からコロナ鎖国に入った北朝鮮。しかし、輸入が途絶えたことで国内の物価が高騰、都市封鎖では餓死者が続出するなど、脆弱な経済の足元が揺らぐ事態となっている。

北朝鮮駐在のロシアのマツェゴラ大使は先月、インターファクス通信とのインタビューで、北朝鮮が消毒施設を建設し、間もなく輸入が限定的ながら再開されるだろうと述べたが、海外からの輸入品を施設での消毒を経た上で国内搬入を認める根拠となる法律が採択された。

(参考記事:北朝鮮の輸入品消毒施設が完成間近、貿易を一部再開か

今月3日に開かれた最高人民会議第14期第13回会議で採択された「輸入物資消毒法」だ。詳細な内容は公開されていないが、国営の朝鮮中央通信は、その概要に触れている。

輸入物資消毒法には、国境通過地点で輸入物資消毒に関連する制度と秩序を厳格に立てて国家の安全を守り、人民の生命を徹底的に保護する上での問題と輸入物資の消毒手順と方法、消毒秩序に背く行為に伴う当該の処罰内容などが規制されている。

(参考記事:北朝鮮で最高人民会議14期13回全員会議

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、この法律が初めて適用されたものと思われる事例を紹介した。しかし、その裏には別の思惑があるとの指摘もある。

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摘発されたのは、朝鮮鉄山(チョルサン)総合貿易会社だ。同社は法採択直後の今月7日、羅先(ラソン)税関を通じて、鉄鉱で必要となる油圧式鉱物粉砕処理選別機の部品を輸入した。

規定では、消毒場で15日間消毒を行った上で、搬入することになっているが、同社は手続きを踏まずに輸入した部品を国内に搬入した。「保衛部(秘密警察)との連携のもとに行われるべき」(情報筋)だった違反行為を、根回しを行わずに独自に行おうとしたため、その動きを察知した保衛部が秘密裏に調査し、摘発に至ったという。

違反行為の見逃し、減刑と引き換えにワイロを要求するのが保衛部のやり方だ。ワイロの支払いを怠れば報復として厳しい取り締まりを行うが、情報筋の説明は、今回の一件もそのような事例であることを示している。

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(参考記事:わいろの額で「拷問メニュー」が変わる…北朝鮮「虐待収容所」の内幕

違反行為に及んだ理由について鉄山貿易は、人民経済計画のノルマが未達成になることを恐れたと説明したが、保衛部は、課せられたノルマに占める粉砕処理選別機の部品の割合は少なく、ほとんどが幹部が使う乗用車用の部品だったということを把握。同社が最初から自動車部品を横流しする目的で、規定を違反して輸入したと結論を下し、上部に報告した。

報告を受けた中央党(朝鮮労働党中央委員会)は、鉄山貿易の党委員会の責任書記、社長、貿易課長を国家保衛省に引き渡した。また党組織指導部は、同社に対する検閲(監査)を実施、党委員会を解散する決定を下した。これは鉄山貿易に対する、事実上の解散命令だ。

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中央党は今月初めから、内閣が主導する経済体制への転換を図るため、経済を独占している党組織や軍が営む事業体に対する調査に着手し、違反があった場合は資産を没収、内閣の傘下に移管させていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が平壌市の幹部の話として報じている。鉄山貿易も、この流れの一環でお取り潰しになった可能性が考えられる。

ちなみに同社は、水産物加工、ロシア、ポーランドへの労働者派遣を行なってきた貿易会社で、昨年11月に米国の財務省外国資産管理室(OFAC)から、別の1社と共に制裁対象に追加されていた。

(参考記事:北朝鮮、党や軍所属の事業体を内閣に移管する事業に着手