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2007年冬、北朝鮮では様々な感染症が全国的に蔓延した。

例えば咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)では、猩紅熱(しょうこうねつ)の感染が広がり、3000人以上が罹患した。病気で働けなくなった人の中からは、コチェビ(ホームレス)になったり、餓死したりする人が続出しだ。

同じ年の夏、水害に襲われた黄海道(ファンヘド)、江原道(カンウォンド)ではコレラの感染が広がり、国際機関が緊急支援に乗り出した。さらには、両江道(リャンガンド)で始まったはしかが、全国に広がった。

北朝鮮当局が、こうした危機に適切に対処できているとは言い難い。病院には薬がなく、患者が市場で購入することを強いられる。貧しい人々は根拠不明の民間療法に救いを求める。

(参考記事:北朝鮮、「MERSには茹でイカが効く!」…民間療法に頼る住民たち

そして2020年。全世界が新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむ中、北朝鮮国民は別の感染症に苦しめられている。

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現地の情報筋によると、中国との国境に接する平安北道(ピョンアンブクト)の東林(トンリム)にある労働鍛錬隊(軽犯罪者を収容する刑務所)で先月中旬、20名以上の受刑者が急に腹痛や発熱の症状を訴えた。労働鍛錬隊の幹部は新型コロナウイルスの可能性を想定し、無碍に扱ってはならないと上部に問題提起を行った。

衛生、栄養状態ともに最悪な北朝鮮の拘禁施設では、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されていた。

(参考記事:「大量死が迫っている」北朝鮮の刑務所、新型コロナ対策で緊張

平安北道安全局(県警本部)、東林郡安全部(警察署)、郡党(朝鮮労働党東林郡委員会)は、防疫所のイルクン(幹部)と医師を動員し、患者に対する検査を行った。

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その結果によると、受刑者の病気の原因は、パラチフスと腸チフスだった。聞き慣れない病気だが、パラチフス菌と腸チフス菌に汚染された水や食べ物により感染する感染症で、衛生環境の悪い国で多く発生している。日本でも発生しているが、その多くは海外で感染し帰国後に発症したものだ。

(参考記事:北朝鮮の高齢者施設で70人死亡…コロナ感染の疑いも

先月末に出所した19人の元受刑者は帰宅を許されず、東林郡人民病院で血液、尿、体温などの検査を受けた上で隔離されている。今月10日の朝鮮労働党創立75周年の日が過ぎてから帰宅が許されるものと思われる。

鍛錬隊は、今回のパラチフスと腸チフスの感染拡大について正確な原因はわからないとしつつも、面会にやって来た家族の差し入れた食べ物が菌に汚染されていた可能性が高いと見ている。社会安全省は、患者が完治するまで面会を禁止した。

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「鍛錬隊生(受刑者)たちは、尋常ではない労働力を発揮しなければならないのに、今の食事では力が出せない、家族の差し入れた食事すら保証されないとすれば働くのは困難だと、あけすけに意見を言っている」(情報筋)

北朝鮮の拘禁施設では、受刑者を1級から7級に分けて、配給する食糧の量に差をつける。一番下の7級の場合は1日に与えられるトウモロコシ飯の量は100グラムに満たない。あまりにも貧弱な食事で栄養失調にならないように、家族から食べ物を差し入れてもらい延命するのが当たり前になっている。つまり、面会禁止は死に直結しかねないのだ。

(参考記事:北朝鮮の刑務所「教化所」の実態(2)

女性受刑者が、劣悪な環境を生き抜くために、刑務官と性的関係を持つ事件も起きている。

(参考記事:北朝鮮の女囚と「濃厚接触」した刑務官が見た快楽と悪夢