北朝鮮が来月5日まで外国人観光客の受け入れを中止したことは、デイリーNKジャパンでも既報のとおりだが、それを巡り国内では様々な憶測が飛び交っている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、現地では中国からのツアー受け入れが中止になったという話が既に広がっている。平壌に行くツアーがすべて中止になったが、中国との国境から近い羅先(ラソン)や新義州(シニジュ)へのツアーは続いていることに、多くの人が首を傾げているとのことだ。

情報筋は「9.9節(北朝鮮の建国記念日)にマスゲームと1号行事(金正恩党委員長が訪れる行事)が予定されていることによるかもしれないが、中国人観光客が増えて外貨稼ぎに良いシーズンにこんな措置を取るとは非常に残念」と語っている。

現地の別の情報筋も、今月15日の解放節(日本の植民地支配から解放された日)、22日の先軍節(金正日総書記が軍中心の「先軍政治」を始めた日)、そして9.9節に大規模な閲兵式と1号行事が予定されていることを、外国人観光客受け入れ中止の理由と見ている。

「当局は外国人の平壌観光をキャンセルした理由として、観光客が宿泊するホテルの補修を挙げているが、そんなものを信じる人がどこにいるのか」とし、理由を明確にしていないことから、1号行事や中国の要人の北朝鮮訪問によるものという説に説得力があると述べた。

首都・平壌で重要な政治的行事がある場合には、外国人、自国民を問わず市への出入りを禁じることがしばしばある。今回の外国人観光客受け入れ中止も、このような発想の延長線上にあるとも考えられる。

(参考記事:労働党記念日控え平壌が「プチ鎖国」状態…市民生活に支障も

最近の中国人観光客の傾向は、手軽な半日、1日ツアーよりも、かなり値段の張る平壌や金剛山(クムガンサン)を訪れるツアーを好む。単なる好奇心ではなく、平壌、金剛山、板門店などの歴史的な場所を訪れることに旅の意味を置いているようだというのが情報筋の説明だ。

「3度行われた中朝首脳会談の後、北朝鮮を訪れる中国人観光客が目に見えて増加したが、外貨を稼ごうにも他のネタがないわが国(北朝鮮)の現実を考えると、中国人観光客は資本もかけず外貨を稼げる絶好の機会」(情報筋)

ところが、来月5日までの外国人ツアー受け入れが中止となり、観光部門の幹部は当惑しているという。受け入れ中止により発生する損害は莫大なものとなると、情報筋は嘆いた。

最近の外国人観光客受け入れ中止は、2011年5月に金正日氏が中国を訪問した時に行われた。北朝鮮滞在中だった中国人観光客は、国営メディアで公式発表がなされるまでホテルに閉じ込められ、観光もできずに帰国したという。

また、2014年11月から2015年3月にかけては「エボラ出血熱」の感染のおそれがあるとして出入国を厳しく制限し、長期間隔離する「プチ鎖国」を実施し、国際社会から呆れられた。

さらに、2015年6月から2016年1月にかけて、韓国で流行したMERS(中東呼吸器症候群)が自国に飛び火することを恐れ、外国人の入国、自国民の出入国を一切禁じる措置を取った。