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北朝鮮の核兵器開発問題で凍結状態にあった南北朝鮮の経済協力に復活の兆しが現れている中、北朝鮮政府は、南北を分断する軍事境界線のすぐ北側にある開城(ケソン)を経済特区のモデルケースに選定し、「経済発展都市」にするための事業を進めよという指示を下した。

デイリーNKの北朝鮮内部情報筋によると、方針(指示)が下されたのは今月4日のことだ。その趣旨は「開城市を経済開発特区地区に選定し、チュチェ(主体)化、現代化、科学化された示範(モデル)経済発展都市にするための事業を全党的な事業として周到、細密に計画、執行せよ」というものだ。

これは、今年4月20日に開催された朝鮮労働党中央委員会7期第3回総会で採択された「社会主義経済建設に総力を集中することについての決定書」に基づき、外国からの投資をベースにした「人民経済発展」を目指すものだ。

その中身を見ると、従来の開城工業団地をモデルにして、市内全域を開発特区地区にふさわしく変貌させるとしている。3階建て以下のマンションを6階建て以上に建て替え、1階には商店、食堂、図書館などの奉仕(サービス)・文化施設を入居させるのだという。

開城工業団地は、2004年に南北経済協力事業として韓国が北朝鮮に造成し、多くの韓国企業が進出していた。しかし韓国の朴槿恵前政権は2016年2月、北朝鮮の核実験などに対する制裁として操業停止を決定。北朝鮮側は資産のすべてを没収する報復措置を取り、現在まで閉鎖状態にある。

(参考記事:開城工業団地「不正な閉鎖」に進出の韓国企業は怒り心頭

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上述した方針には、観光開発に注力すべきこともうたわれている。

高麗の都(919年〜1394年)だった開城の歴史を売り物にし、松岳山(ソンアクサン)や、朝鮮王朝時代に活躍した有名な妓生でドラマや映画でも知られる黄真伊(ファン・ジニ)の墓所など、市内の有名な遺跡地を保存、拡張するとしている。朝鮮労働党が資金支援し、観光道路を立派なものにせよとの指示も含まれている。

(参考記事:実は近くて普通に行ける、北朝鮮旅行

北朝鮮は2007年12月から、韓国からの観光客を陸路で受け入れる事業を行っていた。ソウルからの日帰りバスツアーの形で行われ、1998年11月に始まった金剛山(クムガンサン)観光(1998年11月)と合わせて、内外の観光客の人気を集めた。しかし、金剛山で韓国人観光客が朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士に射殺された事件で人気が落ち込み、1年足らずで中止になってしまった。

(参考記事:北朝鮮、開城観光と南北鉄道運行を中止

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上記の方針で示された計画・設計には白頭山建築研究院が当たり、建設作業は人民保安省(警察庁)7総局が担当。ほかにも朝鮮労働党中央委員会、内閣、国家計画委員会と各道、市、軍の党委員会などが総動員される。

このモデルケースから得られた結果をベースにして、全国の機関のイルクン(幹部)に視察、方式相学(ベンチマーケティング)を行うことを全党的に組織し、開発から運営に至るまですべてを学ばせよとの指示も下された。

今回の方針には、「開城をまず変化、発展させた上で、その烽火を全国で燃え上がらせよ」との指示も含まれている。

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「党の組織指導部と内閣の関連機関では、南朝鮮(韓国)企業の操業を正常化させ、第2、第3の開城工業団地を作り、開城市が南朝鮮の経済投資区観光を活発にして、自給自足が可能な最高の経済特活地域として成長させるため、最善を尽くせということも方針に含まれている」(情報筋)

南北は、開城工業団地内に南北共同連絡事務所を設置する方向で協議を進めているが、北朝鮮はそれ以外にも国内に3ヶ所の連絡事務所を開設する決定を下したと情報筋が伝えた。

「党は開城地区北南連絡事務所の開設と同時に、元山(ウォンサン)に南部、咸興(ハムン)に中部、新義州(シニジュ)に西部事務所を開設することを決定した。方針では『われわれはこの地にしっかり足をつけ、世界に目を向けなければならない』と強調されている」(情報筋)

東海岸にある元山では現在、「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」の建設工事が急ピッチで進められている。かつて韓国からの観光が認められていた金剛山からは約100キロしか離れておらず、観光が再開されれば、多くの韓国人観光客が金剛山を経由して元山を訪れる可能性がある。元山に連絡事務所を開設するとの方針は、それを見越したものと言えよう。

(参考記事:金正恩氏、元山葛麻海岸観光地区の建設場を現地指導

さらに北朝鮮当局は、元山から北に120キロのところにある咸興でも外国人観光客の誘致を図っている。現地に南北合同連絡事務所の開設するとしたのは、金正恩党委員長が進める、東海岸一帯の観光地化の一環と察せられる。

(参考記事:北朝鮮でサーフィンツアー開催、イタリア人プロも同行

今のところ、南北間での協議では、上記3ヶ所の事務所開設は議題になっていないが、近く話し合われる可能性がある。

4月の南北首脳会談後に発表された「板門店宣言」に基づき、南北は連絡事務所の早急な開設に向けて協議を進めている。韓国統一省のチョン・ヘソン次官を代表とするグループは今月8日に開城工業団地を訪れ、現状を確認。19~22日には統一省と現代峨山の関係者が訪朝し、事務所開設に向けた施設の補修の準備作業を行った。

また、統一省内ではイ・ムイル南北会談本部常勤会談代表を長とする「南北共同連絡事務所推進タスクフォース」が設置され、10人の職員が設置に向けた準備作業を行っている。