北朝鮮では、旅客輸送の6割、貨物輸送の9割を担う鉄道を「人民経済の先行管」「国の動脈」として非常に重要視している。

1960年代から鉄道に多額の投資をして、全体の8割以上を電化した。ところが、深刻な電力難で立ち往生する事例が毎日のように起きている。その解決のため、富裕層向けのディーゼル機関車が牽引する列車が運行されていたこともある。

そのディーゼル機関車が、急増する中国人観光客の輸送に駆り出された。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:実は近くて普通に行ける、北朝鮮旅行

新義州(シニジュ)の情報筋によると、当局は中国人観光客の輸送のためにディーゼル機関車を動員することを決めた。元々は有事の際に利用する軍用装備扱いだったというが、情報筋は 「そんな軍用装備のディーゼル機関車まで動員するのを見ると、政府が観光客誘致にかける意気込みがわかる」と述べた。

ディーゼル機関車の運行に必要なディーゼル油は、平壌のトンジュ(金主、新興富裕層)が調達を受け持っている。表向きは利益を折半することになっているが、実際はトンジュが寄付を強いられているのも同然の状態のようだ。

ディーゼル機関車は10両の客車を引いて、新義州と平壌を毎日1往復しているが、それでも「積み残し」があるようで、当局はソビ車(個人所有の運送車両)のうち、状態のいいバスを選んで、観光客の輸送に投入している。

中国当局は、国際社会の対北朝鮮制裁に同調し、自国民の北朝鮮観光を事実上禁止していた。ところが、中朝首脳会談以降は段階的に解禁する動きを見せている。そのため、北朝鮮を訪れる中国人観光客が急増しているのだ。

韓国の朝鮮日報は6月27日、丹東の旅行会社関係者の話として、7月10日までのチケットが売り切れ、1日に多いときで1000人から2000人が北朝鮮に入国していると報じた。また、米国の北朝鮮専門ニュースサイト、NKニュースは、やはり旅行会社関係者の話として、丹東発平壌行きの列車が15両に増やされたが、それでも売り切れ状態が続いていると報じた。

中国・丹東の情報筋によると、観光客の多くはバスを利用して国境を流れる鴨緑江を越え、北朝鮮の新義州(シニジュ)で列車に乗り換えるが、平壌までバス旅行を強いられる観光客もいるという。

平壌から新義州までは、約250キロの距離がある。高速道路が開通すれば数時間で往復可能だが、途中の安州(アンジュ)までしか完成していない。残りの160キロは、デコボコで曲がりくねった一般道路を通らざるをえないのだ。

観光客急増のとばっちりを受けているのは、北朝鮮の一般国民だ。鉄道を利用しようにもチケットが全く取れないからだ。それで、新義州から平壌までの250キロを、短距離を運行するソビ車を何度も乗り継いで行くことが多いという。

一方で朝鮮日報は、北朝鮮を訪れる中国人観光客の急増に、中国政府が歯止めをかけようとしているとして、一度は復活したオンライン旅行サイトから北朝鮮旅行の募集ページが消え、中国と北朝鮮を結ぶ高麗航空のチャーター便運航にストップをかけたと伝えた。