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東西冷戦の時代、西側諸国は高速道路網に、東側諸国は鉄道網に交通インフラの軸足を置いた。北朝鮮も1970年代まで、路線の拡張や電化など鉄道インフラに大々的な投資を行った。一方で道路整備を軽視していたため、未だに道路網は貧弱だ。

韓国統一省の資料によると、2015年の時点での北朝鮮の道路の総延長は2万6183キロ。韓国の道路の総延長10万7527キロの5分の1ほどにしかならない。また、高速道路の総延長は、建設中に大事故を起こし500人以上の貴重な命が奪われた平壌開城高速道路など7路線、729キロで、韓国の31路線、4437キロ(2017年)と比べ物にならない。

大動脈であるはずの平壌と国境都市・新義州(シニジュ)を結ぶ高速道路すらなく、デコボコ道を利用するしかない。それどころか、新義州市内と中国を結ぶ新鴨緑江大橋の連絡道路すら、長年建設できていない状況だ。

(参考記事:北朝鮮の「無理難題」で宙に浮く中朝経済プロジェクト

昨年12月に北朝鮮に滞在した中国人ビジネスマンは、高速道路を利用したときの状況を次のように述べた。

「北朝鮮の道路のうち、最も状態が良い平壌ー元山間高速道路は総延長172キロだが、午前9時に平壌を出発して、元山に到着したのは午後4時過ぎ。7時間かかったので平均時速は30キロにも満たない」(中国人ビジネスマン)

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これは、前日に降った雪のせいで路面がアイスバーンと化したためで、通常時の所要時間は3〜4時間程度のようだ。ちなみに、平壌ー元山間とほぼ同じ距離のソウルー大田間の所要時間は半分ほどでしかない。

高速道路の本領を発揮できないのは、破損箇所が多すぎるためだ。

「北朝鮮を代表する高速道路なのに、破損箇所が多すぎてスピードを出せない。平壌のマンション建設には熱心なのに、高速道路の破損箇所を放置するのは理解できない」(中国人ビジネスマン)

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また、一昨年に北朝鮮の高速道路を利用した日本人観光客も、道路事情の悪さを訴えた。

「平壌から車に乗って開城(ケソン)に向かった。市内の道はきちんと舗装されていたが、高速道路はあちこちに大きな穴が空いていた。タコ(地ならしをするための工具)を使い数人がかりで補修する様子も見かけたが、ほとんどが放置されていた。ドライバーは穴の場所を把握しているようで、器用に穴を避けながら運転していたが、車はかなり揺れ乗り心地はお世辞にもよいとは言えなかった」

「高速道路なのに、車線に飛び出して手を振り車を停めようとする人が頻繁に現れ、肝を冷やした。自分の乗っていたワゴン車を、ソビ車(個人の運送業者の車)と勘違いしたようだ」

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中国にやってきた平安北道(ピョンアンブクト)の住民は、「冬場に大きな交通事故が頻発するのは、道路管理がきちんとなされていないからなのに、当局はそのことに一度も言及したことがない」と不満を露わにした。

金正恩党委員長は、日本製の右ハンドルの車両が事故の原因だとし、廃車を命じたが、それでも事故は減っていないという。

「(一向に減らない)冬の交通事故に、次はどんな理由を持ち出してくるのか楽しみだ」(平安北道の住民)

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道路状態の劣悪さは、軍事的にも大きな問題となる。

平壌出身の脱北者キムさんによると、平壌ー元山間高速道路は一部で5車線になっているが、これは有事の際に軍用機の滑走路として使うためだ。しかし、「今のように穴だらけではとても滑走路として使えそうにない」という。また、「修理しようにもアスファルトなどの資材が制裁で輸入できないため、まともな管理は難しいだろう」と話した。

このような状況を知ってか知らずか、金正恩氏は「自転車用道路を全国に作れ」というトンチンカンな命令を下し、多くの人々を呆れさせている。

(参考記事:金正恩氏「自転車用道路を全国に作れ」指示に庶民は激怒