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北朝鮮政府が行ってきた自国労働者の海外派遣は、人権侵害の温床として厳しい批判を受けている。国連安全保障理事会は制裁決議2397号で、国連加盟国に自国内の北朝鮮労働者を帰国させることを2019年12月までに義務付け、実際に帰国させる事例が相次いでいる。その一方で、未だに働き続けている労働者も少なくない。

そんな中、ポーランド、ロシア、アフリカ諸国、チェコに派遣されている北朝鮮労働者の実態についてまとめた報告書が発表された。

オランダのライデン大学が6日に発表した北朝鮮の強制労働の実態に関する報告書「利益のための人々、世界的規模の北朝鮮強制労働」は、労働者の募集、送り出しから労働、給与、休暇、現地当局との関係に至るまでを詳細に記録している。

報告書がまず取り上げたのは、ドイツのメディア VICE Germanyによる報道で人権侵害の実態が広く知られるようになった、ポーランド・グディニアのクリスト造船所で2014年から2016年まで働いていた北朝鮮労働者Kさんの証言だ。以下、一部を抜粋した。

◯勤務時間

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「規定の勤務時間は1日8時間だったが、10時間から12時間働くのが普通で、指示により24時間勤務させられたことも2回あった。その場合、30分の休憩後、翌日の勤務が始まった」

「4年働いてようやく一時帰国の申請ができた。1ヶ月の休暇が与えられるが、7〜8年働いているのに、一度も帰国していない人も多かった」

◯給与

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「最初の3ヶ月の月給は6ズウォティ(約192円)。それも受け取ったのは5ヶ月過ぎてからだ。その後、最高で700ズウォティ(約2万2000円)を受け取ったが、残業しても夜間勤務しても額は変わらなかった」

「一度だけ『私の給料は4500ズウォティ(約14万5000円)のはずだ、確認して欲しい』と受け入れ先に抗議したことがある。しかし、マネージャーから『あなたはその理由を知っているはずなのに、何が問題か』と言われた。理由は明らかなのでそれ以上の抗議を諦めた」

「他国の外国人労働者が羨ましく、自分自身を惨めに感じた。彼らは月給が6000ズウォティ(約19万3000円)だと言うので、自分は2000ズウォティ(約6万4000円)もらっていると言った。だが実際は500ズウォティ(約1万6000円)だった。真実を語ることはプライドが許さなかった」

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◯生活環境

「寮費は給料から天引され、水と電気を節約するとの名目でテレビを見ることも、温水や暖房を使うことも許されなかった」

「部屋はいつもジメジメしていて、片隅には工事用の型枠が置かれていた。それが放つ悪臭で頭痛に苦しめられていた」

一方、報告書はチェコにおける北朝鮮労働者の実態についても言及している。同国は1998年から2008年までの間、最高で399人の北朝鮮労働者を受け入れていた。労働者はほとんど20代前半の女性で、靴、衣類、食品など少なくとも9ヶ所の工場で働いていた。

チェコ駐在の元北朝鮮外交官で、2000年から2002年までパルドゥビツェ市で北朝鮮労働者の管理を行っていたキム・テサン氏によると、労働者は2〜30ドルの月給の55%を上納させられ、最高指導者の生誕記念日に贈る花の代金まで天引きされていた。集めた上納金は、ソシエテ・ジェネラル銀行系列のコメルチニー銀行から北朝鮮に送金していた。

しかし、チェコ政府は2008年、自国内で働く北朝鮮労働者が人権侵害状態に置かれていることを重く見て、雇用を取りやめ全員を撤収させている。

(関連記事:チェコの北朝鮮労働者が人権蹂躙と批判されたため全員撤収予定

さらに報告書は、ロシアでの勤務経験を持つ元北朝鮮労働者8人の証言を元に、深刻な人権侵害の実態を明らかにしている。

ブラゴヴェシチェンスクの工事現場で働いていて2015年に脱北したAさんは、当局に毎月200ドルを上納していた。ノルマが達成できなければ帰国させられてしまうため、午前6時から午後4時までの22時間働いたこともある。

また、10年前と比べて上納金の額が倍になったとも証言している。これは、ロシアの通過・ルーブルが暴落したにもかかわらず、北朝鮮当局が要求する額がドルベースであるためと思われる。

(関連記事:焼身自殺した北朝鮮労働者、ロシア・ルーブルの暴落が動機か?

深刻な人口減と労働力不足に悩むロシアの沿海州、アムール州は、大勢の北朝鮮労働者を受け入れてきた。国際社会は、北朝鮮の労働者派遣を完全に封鎖する方向で動いているが、ロシア現地からは受け入れを続けたいとの声が上がっている。

(関連記事:ロシアも北朝鮮労働者の受け入れ中止…労働力不足の懸念の声も