北朝鮮の金正恩党委員長が下した指示に、庶民から非難の声が湧き上がっている。その指示というのは「全国に自転車専用道路を整備せよ」というものだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、このような指示が下されたのは今年6月。しかし、着手したのは最近になってのことだ。それは、他の建設工事が山積みだったからだ。

「自動車道もないのに…」

当局が推し進める大増産運動「70日戦闘」「200日戦闘」を受け、北朝鮮全土で建設ラッシュとも言うべき状況が続いている。庶民は、銅像、鉄道、マンション、孤児院の建設などで、勤労動員を強いられるのみならず、建設費用まで強制的に徴収されている。

今回の自転車専用道路の建設にあたっても、強制募金と勤労動員が行われている。

一世帯あたりに強いられる募金の額は中国人民元で10元(約150円)。幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)にとってははした金だが、コメ2キロ半に相当する額の募金は、庶民にとってはかなりの負担だ。

また、一般住民はもちろんのこと、学校の生徒たちも学業そっちのけで建設現場に動員されている。

さらには、この建設工事により、交通や日常生活にも支障が出ている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、清津(チョンジン)市内では、自転車専用道路の建設のため、市内の道路があちこちで掘り返されているせいで、いたるところで通行止めになっているという。

金正恩氏が自転車専用道路の建設を思いついたきっかけは定かではないが、当局は「人民の便利な交通と安全のための金正恩氏の温かいご配慮」などと宣伝している。これが庶民の怒りに油を注いだ。

庶民は「この国にはまともな自動車道すらないのに、なぜ自転車専用道路なんだ」と公共の場ですら反感を隠さないほどだという。

正恩氏の真意は

北朝鮮の道路事情は劣悪そのものだ。きれいに舗装されているのは平壌市の中心部などごく一部に過ぎず、同じ平壌市内でも郊外に向かう道はガタガタだ。外国人観光客が多く訪れる開城(ケソン)ですら、郊外の道は未舗装だ。

高速道路はいたるところに大きな穴が空いているが、それでもあるだけマシだ。大幹線である平壌と新義州(シニジュ)間ですら、高速道路は一部区間にしかなく、東海岸の咸鏡道に至っては高速道路は皆無だ。

全国各地をくまなく視察している金正恩氏は、道路事情の劣悪さを知らないはずがないのだが……。

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