新型コロナウイルス対策のあおりで経済難に陥っている北朝鮮だが、コロナ以外の感染症も広がり、二重三重に苦しめられている。家畜伝染病のアフリカ豚熱(旧称アフリカ豚コレラ)、鳥インフルエンザウイルスの感染拡大が深刻なのだ。
病気の被害に遭うのは人間や動物だけにとどまらない。今度は果物が病虫害にやられている。
(参考記事:コロナで苦しむ北朝鮮、鳥インフル蔓延で踏んだり蹴ったり)大穀倉地帯の十二三千里平野の南端に位置する平安南道(ピョンアンナムド)の平原(ピョンウォン)、粛川(スクチョン)の果樹園では、先月中旬ごろから病虫害の被害を受ける果物の木が続出していると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
同様の被害は、黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院(サリウォン)、黄州(ファンジュ)、鳳山(ポンサン)でも広がっている。情報筋は、具体的な害虫名、病名には触れていないものの、大雨が原因のひとつとなっているようだ。
韓国気象庁の統計によると、沙里院から南東に100キロ離れた開城(ケソン)では、先月10日から今月4日までの間に、年間降水量の68%に当たる537.11ミリの雨が降った。元々、朝鮮半島の中部以北では、梅雨とは言っても普段より多少、雨が多い程度のものだったが、ここ数年は毎年のように大雨が降っている。
(参考記事:北朝鮮「集中豪雨」に警戒呼びかけ)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
隣の黄海南道(ファンヘナムド)では水害そのものによる被害が発生している。現地のデイリーNK内部情報筋によると、大雨が数日間降り続き、農地、道路、鉄道、携帯電話の基地局の浸水、がけ崩れが相次ぎ、住宅50戸が浸水または全壊する被害が発生している。
病虫害にしても水害にしても、より大きな問題は、対応しようにも農場に殺虫剤も消毒薬も何もないということだ。
各地の協同農場は、営農資材の不足に苦しめられてきた。農作業に必要な資材の多くが国から提供されないため、中国から輸入したものを市場で購入していたが、新型コロナウイルス対策として貿易が停止となったため、品物が入ってこないのだ。当然、病虫害の対策に必要なものも入手できない状態だ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面(参考記事:綱渡りの北朝鮮農業、新型コロナ対策で崖っぷちに)
当局は、病害虫対策を現地の農民に丸投げしている。それも、植物性の香料を使った殺虫剤を自主的に開発し使用せよというレベルのものだ。ないないづくしの状況ではあるが、上からの命令とあっては背くわけにもいかず、各農場は殺虫剤を開発して散布しているものの、効果は得られていない。
それを見た当局は、人海戦術に乗り出した。農民のみならず、中高生、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)員、老人、さらには地元に駐屯する兵士まで動員して、害虫を手で取り除かせているが、こちらもあまり効果がないようだ。