北朝鮮の秘密警察・国家安全保衛部(保衛部)は、脱北して韓国や中国に住む家族と携帯電話で通話を行う住民に対する大々的な取り締まりを進めている。

このなかで、保衛部は、住民の間にスパイを忍び込ませ、むしろ韓国への通話を誘導する手法を使い、社会への不信感を高めている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、保衛部がスパイに仕立てあげるのは、違法行為、それも軽微犯罪で逮捕された一般住民だ。教化所(刑務所)送りにした上で、釈放と引き換えにスパイになることを強いる。釈放時には、きちんと情報を報告しなければ厳罰に処すると脅迫する。

スパイにさせられた人は、監視対象となった人と親しく付き合いつつ、一挙手一投足を監視し、何か動きがあればすぐに報告する。「カネに困っているなら、韓国に住む家族に無心すればいい」などと、通話を誘導する手法を使っているという。

道内の会寧(フェリョン)市では、中国キャリアの携帯電話で韓国に住む家族と通話していた50代女性が、保衛部に逮捕されそうになったことがあった。それを密告したのは、この女性と非常に親しく付き合っていた近所に住む女性であることが判明し、市民の間に衝撃が広がっている。

疑心暗鬼に陥った人々は「当局は『内部紊乱を助長する』などという理由で、海外との通話を取り締まっているが、むしろ当局が内部紊乱を煽っている」などと非難している。

中朝国境に面した会寧では、市民の多くが中国キャリアの携帯電話を使っている。商売に欠かせないからだ。こんな状況が続くことから、「次は自分の番かもしれない」と萎縮し、商活動も停滞せざるをえない。

当局は同様の理由で、送金ブローカーの取り締まりを進めている。そのため、韓国に住む脱北者からの送金が滞り、外貨不足に陥っている。中国から輸入した商品の決済ができなくなり、輸入が減り、物価が上昇している。地域経済に悪影響が出ると、保衛部もかすめ取る利益が減ることになるのだが、中央の意向には逆らえないようだ。

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