中国政府は、国連安保理で採択された対北朝鮮制裁決議を厳しく実行しており、軍事用に転用される可能性のある様々な物資の北朝鮮への持ち出しを制限している。その影響で、北朝鮮国内ではチタンの在庫が底をついてしまった。

そこで、北朝鮮当局は例のごとく「密輸」でしのごうとしている。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋がその手口を暴露した。

中国丹東の税関は、制裁決議が採択されて以降、武器の材料となる物品の北朝鮮への持ち出しを厳しくチェックするようになった。通関検査の際にチタン板が1枚でも見つれば、トラックと積み荷を丸ごと押収し、中国の販売業者を呼びつけて尋問するほどの厳しさだ。

「手段を選ぶな」

チタンは軽く強固なため、船舶や化学設備、原子炉、航空機、ミサイルや武器の材料としても幅広く使われる。核兵器と長距離ミサイルの開発に力を注いでいる金正恩第1書記にとっては喉から手が出るほど欲しい金属だが、在庫が払底してしまえば、兵器開発への影響は避けられない。

チタンは、北朝鮮でも採掘が行われている。中国政府が発表した北朝鮮からの輸入禁止リストに石炭や鉄鉱石などと並んでチタンも指定されていることから、生産量の多さがうかがえる。しかし、精錬技術のレベルが低いせいか、軍事用としてはあまり使えないのだそうだ。

このような状況に直面した北朝鮮当局は、各貿易会社に対して「手段と方法を選ばず、チタンを輸入せよ」との指示を下した。そこで、トラックの下にチタン板を貼り付けて密かに持ち出すという、非常に原始的な手法が使われている。

「カネは多めに払う」

中国政府の制裁の厳格な実行によるチタン不足は、北朝鮮の民生経済にも影響を与えている。

その一例がソーラーパネルだ。

北朝鮮は電力難解消のために、国をあげて自然エネルギーを推奨している。中でもソーラーパネルは、電力事情の改善に重要な役割を果たす。増産とさらなる普及を推し進め、5月6日に始まる朝鮮労働党第7回大会に「金正恩氏の輝かしき業績」として示さなければならない。

それなのに、ソーラーパネルの生産が止まってしまった。中国からチタン板を輸入できなくなったからだ。

このままでは、総和(総括)で批判され、処罰されかねないと危機感を抱いたソーラーパネル製作会社の責任者は、貿易会社の担当者に「カネは多めに払うから、チタン板をなんとか調達してくれ」と泣きつく日々だという。

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