北朝鮮の核実験をめぐり、周辺国や国連の動きが慌ただしい。

日米韓3カ国の首脳は、電話会談を通じて連携を確認。核実験に対する報復として、韓国は8日正午から、対北朝鮮宣伝放送を再開した。昨年8月に起きた地雷爆破事件の際に、北朝鮮が放送に猛反発したことから、またもや南北軍事衝突の危機が高まるかもしれない。

中国もまた、北朝鮮に手を焼いている。そもそも、金正恩氏はかねて中国への反感を表していたと言われ、今回の核実験も中国をターゲットにしていたふしがあるのだ。


北朝鮮は水爆実験の翌7日、北朝鮮は核実験を正当化する論説を展開しているが、そのなかに気になるくだりがあった。

「これまで、米国の核脅威・恐喝を受けるわが国をどの国も救おうとしなかったし、同情もしなかった」

米国だけでなく、国際社会に責任があると言わんばかりの主張だが、「どの国も」というのは実は、中国に対する当て付けではなかろうか。反米を声高に叫ぶ裏には、友人のふりをして手を差し伸べるふりをしながらも、決定的な局面では、冷たい態度を取る中国に対する反発が隠されているようだ。

昨年8月、金正恩氏は、反中感情をむきだしにした爆弾発言をしたという情報がある。また、金正恩氏だけでなく、北朝鮮の指導層のなかでは中国に対して「上から目線で先輩風を吹かせる」と反中感情は根強い。

さらに翌9月、北朝鮮は、中国の「抗日戦争勝利70年記念式典」に合わせて行われた中韓両首脳をめぐって、朴大統領を「南朝鮮執権者」、習国家主席を「その誰の」という表現で非難した。この時、式典には後に粛清される崔龍海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党書記が出席したが、後ろの端に追いやられるなど、中国の冷遇ぶりが目立っていた。

その後、10月の朝鮮労働党70周年記念式典に中国共産党序列5位の劉雲山氏が出席し、改善したように見られたが、こうした脈絡やその後に再度関係悪化に進んでいることを見ると、それすらもワナだった可能性が高い。

そしてモランボン楽団の公演ドタキャン直後の15日、金正恩氏は水爆実験の命令書にサインをし、年明け早々の6日に核実験を行った。

もちろん、北朝鮮は核実験をすれば、中国が激怒するのを百も承知だったはず。だとすると、その狙いは、単に中国からの経済支援を取り付けるというレベルのものではない。むしろ中国を「出口なき核ゲーム」に引きずり込むための「核のワナ」だったと筆者は見る。そして、もはや中国にでさえ金正恩氏の暴走は止めることは困難なようだ。

この現実を直視したうえで、北朝鮮への対応策を講じない限り、金正恩氏の核ゲームをとめることは不可能だろう。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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