北朝鮮では原則として自動車、オートバイなどの車両の所有は個人には認められていない。車両は重要な生産手段だからというのがその理由だ。そこで、機関、工場、企業所の名義を借りて登録する形を取ってきたが、それを取り締まろうとする当局とのイタチごっこになってきた。

中国産バイクで鴨緑江沿いを疾走する北朝鮮の男性
中国産バイクで鴨緑江沿いを疾走する北朝鮮の男性/2007年撮影:デイリーNK

当局は、昨年7月にも個人所有のオートバイをすべて没収する措置を取った。理由は「ガソリンの無駄遣い」。これに対して、部品を外して故障を装い、取り締まりを逃れようとする人も現れた。こうしたなか、なぜか当局は個人所有禁止の方針を撤回したと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、道の人民保安部(警察)は11月初めにオートバイの個人所有を解禁。しかし、市場での売買を認めたわけではない。

オートバイを買うには、人民保安部が経営する「軍人商店」に出向く。価格は以前よりかなり高くなっているが、代わりに個人所有を認める国の証明書を発行してくれるという。

軍人商店で売られているオートバイは「普通江」ブランドになっているが、実際は中国から輸入したものにロゴを貼っただけだという。価格は9000人民元だ。中国では125CCのオートバイが2000元から3000元程度で売られていることを考えると、激しいボッタクリだ。

しかし、取り締まりにあって没収されることもなく、ワイロが必要ないというメリットもあるので、必ずしも高くつくというわけではないようだ。

税金制度の撤廃を公式に宣言している北朝鮮では、国や地方の機関が運営資金を稼ぐために、ありとあらゆる名目で住民から金を徴収する。代表的なものが、市場で商売する際に必要な「市場管理費」だ。このシステムも、地方政府の運営資金の一環と見られる。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の別の情報筋によると、オートバイの個人所有を認めるニュースを住民たちは概ね歓迎する雰囲気だという。とりわけ幹部やトンジュは喜んでいる。

一方で「この国の方針は朝令暮改」「急に方針が変わっていつまた没収されるかわからない」とし、購入を躊躇する人がほとんどだという。私有財産権が保証されていない北朝鮮では、国を信用できないのも無理はない。

    関連記事