日米韓は3日、北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の首席代表会合をワシントンで開いた。北朝鮮が11月28日に日本海で実験(結果は失敗)した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など最近の情勢を巡って意見交換。北朝鮮の挑発行動を抑止するため、日米韓が連携し、引き続き強いメッセージを送ることで一致した。

そのメッセージというのは◆対話に応じるよう要求◆核実験や長距離ミサイル発射実験の中止◆核活動凍結◆寧辺の核施設を監視する国際原子力機関(IAEA)査察官の復帰――などというものだ。

これを見て、筆者は「えっ、それだけ!?」と思わざるを得なかった。金正恩氏の高笑いが聞こえてきそうな消極的な内容である。

これらの内容は、はるか以前から求めてきたことだ。それに北朝鮮が応じないから会合を開いたのに、より強い新たなメッセージを発するためのアイデアと合意が、日米韓の間で生まれなかったのだろう。

その背景には、3カ国の思惑のズレがある。

まず、中東情勢や対ロシア関係に力を振り向けているアメリカは、北朝鮮に関心がない。

また、アメリカが関係改善を進める相手として、キューバは「OK」でも北朝鮮が「アウト」となる理由が厳然としてある。オバマ大統領も、任期中にイランやキューバとの関係改善を固めるだけで大忙しだろうし、自分に対して人種差別的なヘイトスピーチを繰り返す北朝鮮に対し、感情的な拒否感を持っていてもおかしくはない。

次に韓国は、表面的には北に対して強気だ。8月の軍事的緊張の際、北朝鮮の地雷で自軍兵士が吹き飛ばされる動画を公開するなどして国民の「愛国心」を鼓舞してきただけに、弱腰な態度は見せられない。しかし本音では、近く予定されている高官会談に期待したい現実があり、今ここでことを荒立てる気はないのだ。

日本はどうか。

来年夏の参院選で、安保法制反対派からの巻き返しを警戒する安倍政権は、外交で得点を稼ぐ必要に駆られている。日本人拉致問題が、そのための重要なテーマであることは言うまでもない。少なくとも当面、安倍政権の内部では北朝鮮を追い込むよりは対話を模索するベクトルが強まるはずで、失敗したと見られているSLBM実験にこだわる気はないのかもしれない。

こうした日米韓の態度はいずれも、「北のSLBM技術は未熟だ」「まだ時間がある」との認識が背景にあるのだろう。

しかし過去を振り返れば、そんなことを言っている間に、北朝鮮が核武装してしまった現実がある。その教訓を踏まえられないのは、重大な過ちにつながりうる「感覚のズレ」と言わざるをえない。現に、北朝鮮がSLBMを完成させる日は、意外に早いとの専門家の指摘もある。

それに、集団的自衛権の行使に舵を切った日本は、今までとは違う角度から北朝鮮の軍事情勢を見るべきではないのか。いまや日本は、北朝鮮の脅威を受け身で語っていてはダメなのだ。何故なら場合によっては、海上自衛隊が北朝鮮のミサイル潜水艦に先制攻撃を加え、撃沈すべき事態があり得るからだ。

この辺の問題については、日本のマスコミも突っ込みが足りない。安保法制に賛成するにせよ反対するにせよ、軍事情勢に関心を持てないなら、安保を巡るどんな主張にも意味がないのではないか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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