外貨稼ぎのため、海外に派遣された北朝鮮の労働者が劣悪な環境で働かされている問題については、デイリーNKでも報じてきた。「賃金のピンはね」「労働基準違反」などは、国連機関も勧告している。

北朝鮮と国境を接している中国吉林省延辺朝鮮族自治州の琿春市では1000人以上の北朝鮮人が働いている。このうち、羅先(ラソン)市に本社を置く大興貿易会社所属の労働者200人が「劣悪な労働環境で働かされている」と、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

4カ月も賃金未払い

北朝鮮の貿易関係者によると、200人の労働者は中国からロシアから輸入したタラなどの魚介類を加工する仕事に従事している。中国の労働法では、1日8時間労働、週44時間労働、休日は週1日と定めているが、彼らに対してはその基準すら守られていないという。

「労働時間は12時間から多い時では14時間にも達する。休みは1ヶ月にわずか1日のみ。また、大興貿易と中国の水産加工会社が結んだ契約では、労働者の月給は人民元で500元(約9700円)が、北朝鮮労働者に支払われる金額は300元(約5800円)に過ぎない」(北朝鮮の貿易関係者)

ピンはねされた賃金も、朝鮮労働党創建70周年(10月10日)記念行事のための「忠誠の資金」に当てるとの名目で、今年7月から一切支払われていない。この貿易関係者によると「労働者たちは、工場では商品価値のないタラの内蔵を加工して売り払い、なんとか食いつないでいる状態」だという。

出稼ぎで中国の青島にある石炭工場で働いた経験を持つ咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民は「北朝鮮から派遣された60人の同僚がいたが、中国政府の大気汚染改善策で石炭消費が激減したことから、工場は北朝鮮労働者に月給が払えなかった。彼らは作業に不可欠なマスクや手袋など最低限の装備も支給されていなかった」と語る。

中国やロシアで働く北朝鮮の労働者が劣悪な労働環境に置かれていることは、国際的に人権問題となっている。それにもかかわらず、なぜ中国企業は北朝鮮労働者を雇用するのだろうか。

1993年に脱北して現在は「韓半島平和繁栄研究所」の所長を務めるキム・ヒョンドク氏は東亜日報に寄稿した記事のなかで次のように述べた。

「吉林省図們で工場を営む韓国企業関係者は『統一に貢献したい、北朝鮮を助けたいという動機ではなく、単純に北朝鮮の労働力は安くて利益につながるから』と答えた。北朝鮮の国家機関が労働者を管理するので安定性も高い。安価で安定した労働力として北朝鮮労働者を雇用している」

また、キム氏は「訓練期間を過ぎれば生産性も非常に高く、言葉も通じるので技術を教えるのも容易」という点も付け加えた

中国企業も同じような理由で北朝鮮労働者を雇用していると見られる。他国の企業も概ね同じ理由だろう。しかし「人権侵害に加担している」との批判を受けかねないリスクがあることも企業担当者は理解すべきだ。

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