北朝鮮経済を事実上牛耳っている「トンジュ(金主、新興富裕層)」。彼らは、新たなビジネスチャンスを掴むため、権力層との人脈作りに余念がない。その実態を平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

党創建70周年記念期間中のモランボン楽団や青峰楽団のライブのお知らせを伝える朝鮮中央テレビ(画像:朝鮮中央テレビキャプチャー)
党創建70周年記念期間中のモランボン楽団や青峰楽団のライブのお知らせを伝える朝鮮中央テレビ(画像:朝鮮中央テレビキャプチャー)

国営テレビの朝鮮中央テレビで5日、朝鮮労働党創建70周年を記念する「モランボン楽団」や「青峰(チョンボン)楽団」のライブのお知らせが放送された。他にも様々な音楽講演が予定されているが、こうした分野でもトンジュが深く関わっている。

また、10日に開かれる軍事パレードの参加者のためだとして、豚を送るトンジュも続出。なかには、30頭も送りつけてきたトンジュもいるほどだ。彼らの狙いは「権力層へのゴマすり」。

労働党関連行事に、必要な物資や資金を提供しながら参加することで、高級幹部の覚えをよくし、ビジネスに活かそうと言う意図が隠されている。

また、ある幹部が工場を訪ねて「模範的に生産が行われている」と語れば、トンジュたちは、その工場に相次いで支援物資を送る。こうした「ゴマすり競争」はさらに加熱し、現地指導の日程や政策の方針が発表される前に、それに沿った動きを見せる。

なかには、上からの指示がないにもかかわらず、工場の従業員に管弦楽団を結成させ、党創建70周年記念行事を独自に行うケースすらある。もちろん、労働党や金正恩氏に対する忠誠心から来るのではなく、金儲けのためだ。

トンジュからすれば、名目上は賄賂ではなく行事への自発的な献品、献金であり、正々堂々と差し出すことができる。受け取る方も気が楽だ。代償として、公営事業に参入できたり、外貨稼ぎなどのビジネスで国から便宜を図ってもらえる。

いまや「最高指導者が何を望んでいるかを把握することが、北朝鮮ビジネスでは欠かせない」と情報筋は皮肉った。「ゴマすりレース」は、トンジュだけではない。数々の公演に出演する芸能人も「どうすれば金正恩元帥に気に入られだろうか」「どうすればもっと目立つことが出来るのだろうか」と考えるようになった。

幹部たちも新聞やテレビで行事の予定が発表されると大喜びするという。トンジュたちから差し出される金品をくすねるチャンスが生まれるからだ。北朝鮮当局が国民に強いる「忠誠心」は、いまや賄賂の名目となってしまったようだ。

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