北朝鮮の首都・平壌の「路面電車(軌道電車)」は、日本の植民地支配下だった1923年に開通した。朝鮮戦争時に破壊されたが、1991年に復活。平壌市民の足として親しまれてきた。しかし、一部の路線が廃止されたと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

今回廃止となった光復通りを走る路面電車(画像:comradeanatolii)
今回廃止となった光復通りを走る路面電車(画像:comradeanatolii)

平壌を頻繁に訪問する中国人情報筋は、RFAに「万景台に向かう路面電車が最近廃止されて、軍隊がやってきて数日のうちに線路を撤去して舗装も完了した」と語った。

廃止理由は金正恩第1書記が、「美林(ミリム)乗馬クラブに向かう外国人に路面電車を見せたくないから廃止せよ」と指示を下したからだという。

代替交通手段としてバスが導入されたが、非常に混雑しており、市民の間からは「外国人と市民のどっちが大切なのか」と不満の声が上がっている。

平壌市民に親しまれてきた路面電車

路面電車は、「平壌の交通問題を解消させよ」という故金正日氏の指示によって、1991年4月15日の太陽節(故金日成氏の誕生日)に4路線19.1キロが開通した。その後、延長と廃止を繰り返しつつ、平壌市民の重要な足として活躍してきた。

今回、廃止されたのは平壌駅から高層マンションマンション群のある光復通りを経て万景台を結ぶ10.3キロの路線と思われる。これにより、残りの路線は紋繍(ムンス)~土城(トソン)間11.9キロと、楽浪(ランラン)~西平壌(ソピョンヤン)間12.1キロの2路線、24キロとなった。

しかし、外国人の目に触れさせたくない、つまり「美観が良くない」との理由で路面電車を廃止させた金正恩氏の指示には首を傾げざるを得ない。

平壌を訪れる外国人観光客向けに、チャーターした路面電車に乗って市内をめぐるツアーが何度も開催されており、なかなかの好評ぶりだからだ。

鉄道マニアにとって平壌は地上の楽園?

「平壌の路面電車は貴重な観光資源です」

そう言い切るのは、アジアの鉄道・バス事情を紹介するサイト西船junctionどっと混むの管理人であるPierre2427(ピエールにしふな)氏。ピエール氏は、平壌市内を疾走する日本の中古バスなどの貴重な写真をデイリーNKジャパンに提供してくれている。

「平壌は地下鉄・路面電車・無軌道電車(トロリーバス)と各種軌道交通が揃っています。現在、東アジア・東南アジアでこの3種類の軌道交通が共存する都市は、中国以外では平壌のみです。さらに日本の中古バスも多く活躍しており、鉄道・バス好きにとってまさに『地上の楽園』です」

日頃から衛星写真を通じて平壌市内の路線などをウォッチしているピエール氏は、「衛星写真で確認したところ、船橋~松新間は2014年ごろに廃止し、無軌道電車化されたようです」と言う。

全線廃止については「確認できていません」と前置きしながらも次のように語った。

「平壌の 路面電車は2008年から2009年に『万景台(松山)』から『平壌駅』間の全区間で軌道改修工事をし、2008年にチェコのプラハから20両の車両を新規導入したばかり。それにもかかわらず、廃止してしまうとしたら…本当に残念でなりません」

    関連記事