北朝鮮で、農民たちが、本来所属する協同農場から抜けだして山奥で暮らすケースが増えていると咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

軍事境界線そばの北朝鮮側の山 © RogerShepherd@HikeKorea
軍事境界線そばの北朝鮮側の山。山の中腹はほとんど畑になっている。 (画像: RogerShepherd@HikeKorea)

山奥で暮らす農民たちは、近隣の山の中腹を開墾した数百坪にも及ぶ個人耕作地を持つ。そこで協同農場とは別に、食料用、販売物としてトウモロコシ、ジャガイモ、豆、野菜などを栽培する。

北朝鮮で、こうした個人耕作地はかつては認められていなかったが、2011年から当局は、個人耕作地1坪あたり、北朝鮮ウォンで300ウォンから500ウォン(約4.5円~7.5円)の税金を徴収して土地の使用許可を出しはじめた。

仮に200坪を耕す場合、100,000ウォンの税金がかけられる。コメに換算するとおおよそ20キロ分に相当するが、当局公認で耕作ができて、さらに収入も見込めることから、4年間で個人耕作地やその番小屋は数十倍に増えた。

耕作地は、農民たちが住む家から近場の山の中腹に畑がある場合が多く、以前から協同農場の仕事の合間に、個人耕作地で農作業にはげんでいた。ところが、最近になって事情が変わりつつあると内部情報筋は語る。

「農民たちは、山奥の個人耕作地の一角に3~4坪の掘っ立て小屋を建てて暮らしている。7月の初めから10月までの3ヶ月という長期間を小屋で暮らすので、炊事設備から暖房用のオンドルまで、様々な生活道具が完備されている」

彼らが、個人耕作地につきっきりになる理由について情報筋は「農作物を守るため」と述べる。

「畑から少しでも目を離すと、半年の時間を費やして育てた作物が一瞬にして盗まれてしまう。家族が交代で小屋に住み、昼は収穫、夜は畑の番をするのだ」(内部情報筋)

生活を守るための手段でもあるが、こうした状況に、ほとほと困り果てているのが、協同農場や人民班(町内会)の班長、保安員(警察官)など農民たちを管理する側の人間だ。

人民班長や保安員は、中央からの指示を農民たちに伝える重要な任務を担っている。以前なら「会議や講演会を開く」といえば農民たちが集まったが、今はもう来ない。

出席させようと協同農場内の家を訪ねても、そこにいるのは老人や子供ばかりで肝心の大人が誰もいない。彼らがいるはずの個人耕作地の掘っ立て小屋を訪ねようにも、どこに誰が住んでいるのか把握すらできておらず、さらに小屋は広範囲に分散しているため、戸別訪問は困難だ。

ようやく本人に会えたとしても「作物が盗まれる」との理由で、彼らは絶対に個人耕作地を離れようとしない。

また、協同農場からは農作業員がいなくなり、「農作物泥棒」の格好のエサになってしまった。当局は、仕方なしに無職の青年を雇って協同農場の見張り番をさせている。

金正恩第一書記は、「森林復旧戦闘」を強調しながら、今年初めから始まった植林に使うため、個人耕作地の一部で耕作を禁止する措置を取っている。しかし、どろぼうを心配しなければならないほど個人耕作地が活発な様子から、この措置も毎度のごとく「なあなあ」になってしまったようだ。

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