先月24日、デイリーNKと国民統一放送の主催でセミナー「玄永哲以後の北朝鮮体制展望」が開かれた。

このなかで、「北韓民主化ネットワーク」の金永煥(キム・ヨンファン)研究委員は、「金正恩第一書記の恐怖政治は強化され、幹部や住民から不満が出ているが、短期間で体制を不安定化させる要因にはなり難い」との見方を示した。

北朝鮮は高度監視社会…反政府運動は困難

金研究委員は、報告を通じて「北朝鮮は監視体制が高度に発達した国で、監視カメラが数千万台あるなど他国に比べて監視装置が少なくとも10倍以上発達しており、(体制に反対する)行動は難しい」と述べた。

また、「軍や党の最高位層は一挙手一投足を監視されているため、何らかの計画を立てても、その予備行動すら行うのは難しい。全社会が高度に軍事化、組織化されている北朝鮮で、一般住民が(反体制的な)直接行動を行うのはほぼ不可能だ」と分析した。

北朝鮮には「軍」はあっても「軍部」はない

金研究委員は、「軍部は軍生活で縦横無尽に網羅された人間関係と指揮系統を基にして作られるが、朝鮮人民軍ではあらゆるレベルの私的関係が禁止されている。高級将校が数人集まるだけで『何かを企むかもしれない』と思われるほどだ」と軍部内で派閥をつくることが不可能に近いことを指摘。

さらに、「指揮系統は、徹底して最高権力者中心となっており、他の国なら存在する参謀総長や国防大臣中心の指揮体型は存在しない。つまり、軍独自の動きというのはありえない」と北朝鮮でクーデターが起こる可能性が極めて低いと述べた。

しかし、「政治経済状況が悪化すれば、クーデターが起こる可能性も産まれてくる」とも付け加えた。 

70年かけた体制は一朝一夕に崩れない

現在の北朝鮮体制の安定性について金研究委員は、次のように語った。

「金日成・正日氏が統治した67年間、北朝鮮という国家のすべての仕組み、社会構造、住民の意識が金ファミリーの独裁体制に合わせて組織されてきたため、体制が一朝一夕に崩壊することはないだろう」

「金正恩氏の統治はバランスを欠いているが、さらに先鋭化すると断定するのは時期尚早だ。金正恩氏は一貫して経済を重視する政策をおこなっているため、恐怖だけを全面に押し出すことはないだろう」

忠誠心は劇的に低下

金研究委員は、「北朝鮮体制が不安定説」について、冷静な分析を提示する一方、かつてと違い「体制への忠誠心が急激に低下し、体制不安定を呼び起こす要因となり得る」と指摘する。

「北朝鮮国内で、金日成氏と金正日氏への見方が違うように、金正日氏と金正恩氏への見方はかなり異なる。金正日氏に対する忠誠心が金日成氏の半分になったとすれば、金正恩氏に対する忠誠心は金正日氏の半分(金日成氏の25%)かそれ以下だ」

「金正恩氏は幼くして表舞台に登場した。若い頃に権力と権威を積み重ねる準備作業を経た金正日氏と比べると、条件が圧倒的に不利だ」

「北朝鮮で、今すぐに大きな変化が起きる可能性は低いが、10年、15年後には、さらに高まるだろう」

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