賄賂と拝金主義が蔓延る北朝鮮では「将軍様の指示もカネ次第」などと揶揄されるが、秘密警察にあたる「国家安全保衛部」でさえも、取締を収賄の絶好のチャンスとして利用している。

携帯電話で赤ん坊を撮影する男性
携帯電話で赤ん坊を撮影する男性(画像:読者提供)

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、最近、保衛部は、国内情報が外国、とりわけ韓国に流れるのを防ぐために携帯電話への監視と盗聴を強化している。

運悪く保衛部の取締にひっかかった住民は、案の定取り調べの過程で巨額の賄賂を要求される。

両江道・金正淑(キム・ジョンスク)郡在住のある住民は、韓国の脱北者家族と携帯電話で通話。しかし、保衛部の電波探知に引っかかり摘発されてしまった。たあいのない通話内容だったが、保衛部は住民を数日間拘留し、2000ドルの賄賂を要求した。北朝鮮ウォンで約1640万ウォン、コメが3.2トンが購入できる莫大な金額だ。

本来、違法通話を摘発すれば、被疑者の身柄は上部機関の両江道保衛部に送るが、あえて数日間拘留して賄賂を要求する。賄賂を払えば「なかったこと」にするが、払えない住民は「実績を上げる」ために身柄を上部機関に送致するのが保衛部のやり口だ。

内部情報筋によると、金正恩体制になってから、海外との携帯通話は特に厳しく取り締まられるようになったという。

中国への通話が摘発されれば、一般経済犯として身柄を保安署(警察)に送られる。一方で、韓国への通話が摘発されると通話内容を厳しく審査され、「経済犯」と「政治犯」に分類される。政治犯になると、内部情報流出罪で輸城(スソン)教化所(25号政治犯管理所)送りになるケースもある。

両江道保衛部に、2ヶ月の取り調べを受けたある住民は「韓国に住む息子に生活が苦しいからカネを送ってくれと言っただけだ」と答えた。この程度なら重罪に当たらないが、やはり2000ドルの賄賂を暗に要求された。

保衛部が2000ドルという高額賄賂を要求するのは、韓国から多額の送金を受け取っていると見ているからだ。しかし、韓国で働く脱北者の1ヶ月の平均給与は2013年で1330ドル。脱北者の平均月収以上を要求する保衛部のやり口は、極めてあくどい。

別の住民は、懲役7年を言い渡され「輸城(スソン)教化所」に収監されたが、保衛部幹部に2000ドルの賄賂を渡したら、一般経済犯に格下げされて保安署に送られた。さらに、罪状の軽い経済犯扱いとなり労働鍛錬隊3ヶ月の刑で済んだという。

「保衛部は罪のない人に罪を着せて賄賂が払えなければ実績のために収容所送りにする。住民たちは、法よりもカネが優先される北朝鮮の現実を『人民共和国ではなくドル共和国』だと揶揄している」(内部情報筋)

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