日本や韓国に比べて降水量が少ない北朝鮮では、農業事業において灌漑が重要になる。北朝鮮の「気象水文局(気象庁)」は、今年の降水量が通年の半分から7割に留まると予報。これを踏まえて北朝鮮当局は、「全党、全国、全民が総動員で日照りの被害を防ごう」とのスローガンを掲げて全国的に灌漑工事をはじめたと平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

人々は9・9節に向けて壁を直す工事をしていた
擁壁を直す工事に動員されている住民たち。

工事には専業主婦から中学生に至るまで全国の人々が動員され、各農場では数十にも及ぶ井戸掘りと貯水池建設工事が朝から晩まで続く。

18日付の労働新聞は、咸鏡南道(ハムギョンナムド)徳城(トクソン)郡で、1000町歩ほどの農地に対して700の井戸と20の貯水池、それを囲む100の堤防を作ったと宣伝している。

しかし、工事器具などが備わっていないため、シャベルとツルハシを使って人力で大量の土を掘る。そして、大人が掘りあげた土を、今度は子どもたちが瓶やタライに入れて運んで堤防を積み上げていくという極めて原始的なやり方で堤防をつくっていることから事故も続発する。

また、貯水池の水漏れ防ぐためのビニールが供給されず、住民たちが1人あたり数千ウォン(コメ1キロは5000ウォン≒75円)を集めて市場で自前で購入しなければならない。

住民は、「誰の口に入るかわからないコメのために、なんでこんな苦労をしなければならないのか」「全国の人々が動員されているのに収穫はこの有り様か」と国の農業政策を批判しているという。

韓国気象庁の統計によると、平壌の年間平均降水量は911.3ミリ、国境地帯の恵山(ヘサン)に至ってはわずか591.4ミリ。ソウルの1450.5ミリ、東京の1528.8ミリより少ない。北朝鮮の農業に必要なのは、素人を動員したその場しのぎの溜池ではなく、恒久的な灌漑設備だ。

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