北朝鮮が、潜水艦からのSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験を行った。今回は模擬弾の発射で、開発は初期段階とも言われるが、韓国軍当局が予想していたよりも開発ペースは速い。

この出来事を受け、ジャーナリストの李策氏は「北朝鮮の兵器開発のスピードが気になる」として、興味深い指摘をしている。

「かつて、ベトナム戦争や中東戦争に直接参戦し、その後も世界各地の戦場に兵器を売り込んできた北朝鮮は、現場からのフィードバックを得つつローテクからハイテクへと段階的に技術を高めていく、独自のノウハウを持っているのではないか」というのだ。

ちなみに、武装勢力「イスラム国」がヨルダン空軍機を撃墜する際に使用した携帯型対空ミサイルも、北朝鮮がシリアに輸出したものだとの情報がある。

北朝鮮の朝鮮人民軍は兵力や装備の数は多く揃えているものの、そのほとんどが「骨董品レベル」だと言われている。旧ソ連や中国から輸入した、ひと世代もふた世代も前の兵器や武器も少なくない。核兵器の開発に尽力してきたのも、通常兵器ではもはや、ライバルの韓国に太刀打ちできないからだとされてきた。

しかしその一方、かなり早くの段階から無人機を開発し、前線で運用してきたのもまた事実なのだ。

たとえば、2014年3月にはキヤノン製のカメラを搭載した小型の機体が軍事境界線の南側で墜落。韓国政府は同機が北朝鮮から飛来したと見ている。

また、2012年4月の軍事パレードには別の無人機が登場し、軍事専門家を驚かせた。韓国からの情報によると、北朝鮮は第三国を経て、米国製の高速標的機「MQM-107D」を入手。それをベースに、偵察・攻撃力を備えた機体を開発したとされる。

また、北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会は2月10日、政治局会議を開催し、様々な政策を盛り込んだ決定書を採択した。その中でも、精密兵器や無人兵器の開発に力を入れていくと明確に述べている。

ちなみに、韓国が北朝鮮の新兵器に驚かされるのは、今年に入りSLBMの発射実験で2回目だ。2月に試射が公開された新型対艦ミサイルも、韓国にとっては脅威になっている。

そして韓国に輪をかけて、と言うか、ほとんど異次元レベルでのんびりしていたのが日本メディアである。主要メディアは北朝鮮の新型ミサイルや新型潜水艦について、米韓の情報を引用して報じるだけで、分析らしきことをほとんどしていない。

もちろん、北朝鮮の開発する新兵器が、日米の先端兵器にとっては敵ではないことはわかる。それでも、北朝鮮は着実に技術を積み上げ、驚異の度を増してきた。

思い返せば20年前、北朝鮮がロシアから弾道ミサイル発射潜水艦を「スクラップ」として輸入した際にも、「あんなものから新型潜水艦を作るのはムリ」と見る向きも少なくなかった。

しかし、現実はどうか。北朝鮮の兵器開発能力を、決して侮るべきではなかろう。

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高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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