北朝鮮当局が、政府所有の建物を新興富裕層(トンジュ:金主)に次々と払い下げていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

トンジュたちは、北朝鮮国内のありとあらゆる不動産に投資しているが、故金正日氏の「護衛部隊(親衛隊)」が使っていた建物までも購入したという。

平壌事情に詳しい情報筋によると、トンジュが購入した物件は平壌市内普通江(ポトンガン)区域の慶興洞(キョンフンドン)にある。そばには「柳京ホテル」が構えるなど、まさに平壌市内の一等地だ。豪華な建物内には、招待所や会議室が備わっている。

かつては、護衛部隊が使っていたが、金正日氏死去後に、部隊は解散。建物は空き家となっていたが、4月初めに競売にかけられた。希望落札価格は40~50万ドル、激しい競争の末に競り落とされたという。

北朝鮮では、不動産の売買は違法だが半ば公然と行われてきた。しかし、護衛部隊が使っていたような「由緒ある物件」が売買されるのは極めて異例だが、それにはあるワケがあった。

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金日成氏、正日氏の時代、護衛部隊の建物は「1号事業秘密」に指定され、何らかの事情で空き家になった場合は、同じ任務を遂行する部署を入居させていた。それができない場合は秘密保持のために建物を取り壊していた。しかし、金正恩氏は不動産に関してある指示を出す。

「出処を問わずに個人資産を不動産に投資させよ」
「利益も最大限保証せよ」

建築ラッシュの新義州市内。マンション群はトンジュの資金で建設が進められていると言われている。
建築ラッシュの新義州市内。マンション群はトンジュの資金で建設が進められていると言われている。

こうした指示が下されたことから、護衛部隊の建物まで競売にかけられるようになったと情報筋は語る。トンジュたちは、個人名ではなく、当局機関や企業所などの名義を借りて買い取り、リフォームした上で売り払う。

普通江区域にあった護衛総局の3階建ての招待所は、民家にリフォームされて5万ドルで売却された。郊外の龍城(リョンソン)区域にあった建物も同じように払い下げられた。

北朝鮮では、現在、秋に控えた「労働党創建70周年」記に向けて、金日成・正日父子の銅像建設などが進められている。「大記念碑的建築」と枕詞を付けて莫大な資金を投入し、「ハコモノ建設」に熱を上げるのが、1980年代以降の北朝鮮の特徴の一つだ。

しかし、「ハコモノ建設」によって、資金と資材が不足し、一般住民のマンション建設が停滞。こうした状況を打開するために、資金力のあるトンジュが建設業に投資するように北朝鮮当局は、仕向けたようだ。

小売、流通、運輸、建設など、トンジュが北朝鮮経済の牽引役をしていることは間違いない。

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