今まで外国人観光客が訪れることがなかった海州(ヘジュ)市にも外国人向けホテルが建てられた。@David Stanley
今まで外国人観光客が訪れることがなかった海州(ヘジュ)市にも外国人向けホテルが建てられた。@David Stanley

観光客の3〜4割が訪れるアリラン祭中止

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中国西安の北朝鮮専門旅行会社のヤング・パイオニア・ツアーズは「平壌の朝鮮国際旅行社は、2015年のアリラン祭(マスゲーム)は行われないことを確認した」と発表した。中止の理由について公式の説明はないと同社は明らかにしている。

同社は、今年の北朝鮮も「平壌国際マラソン」「70周年目の解放記念日」と「朝鮮労働党創立70周年」など、エキサイティングでユニークなイベントがあることを忘れないでほしいと伝えている。

既にデイリーNKは、4月11日に平壌で予定されていた「テコンドー創設60周年記念式典」と8月24日に予定されていた「第19回テコンドー世界選手権大会」がエボラ対策を理由に取り止めになったことを報じている。

このままでは、4月12日に開催予定の「平壌国際マラソン」の開催すら危うい。各旅行会社は北朝鮮観光の目玉として北京からの定期便に加えて上海からのチャーター便も利用して多くの観光客を誘致しようとしているが、もし中止になれば旅行会社も北朝鮮も大損害を被るだろう。

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観光産業に力を入れる北朝鮮

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世界的に見ると、産業のない国が観光業に力を入れるケースが多い。手間やコストがかかる産業や工業に比べて相対的に安上がりで、環境破壊も抑えられ、国のイメージ向上にも貢献するからだ。

例えば北朝鮮の友好国のラオス。2011年には観光客数は272万人だったが2012年には330万人、2013年には377万人と22.2%、13.5%と急増している。

これは、ラオス政府がエコ・ツーリズムの宣伝に力を入れたことで、ニューヨーク・タイムズの推薦観光地に選ばれたことが大きなきっかけとなった。

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ラオスの成功を目の当たりにしたのか、北朝鮮もここ数年、観光産業に力を入れている。

2013年12月には馬息嶺(マシンリョン)スキー場をオープンさせ、外国人観光客の訪問が許されていなかった中朝国境の新義州市や東林郡、平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)市などを開放した。

また、各旅行会社でも朝鮮国際旅行社と共同で全国縦断自転車ツアー、サッカー北朝鮮リーグ観戦ツアー、サーフィンツアー、平壌地下鉄乗り倒しツアーなどユニークな商品を開発している。

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観光客急増も入国禁止措置で大損害

北朝鮮の努力の甲斐もあってか、観光客数も急増した。北朝鮮旅行を専門に扱う複数の旅行会社の話によると、2013年に北朝鮮を訪れた外国人観光客の数は6000人と過去最高を記録した。

また、中国国家旅遊総局の資料によると、中国人の北朝鮮訪問者数は2009年の6000人から2010年13万人、2011年13万人、2012年には23万7000人を記録した。23万人のうち5?6万人が観光客と推測されている。

北朝鮮のキム・ドジュン国家観光総局局長は昨年8月の共同通信とのインタビューで2013年の外国人観光客数は10万人に達したと明らかにしている。

韓国の対外経済政策研究院の資料によると観光収入は2100万?3400万ドル、開城工業団地から得られる収入の20?40%に相当する。

この数字に基づき単純計算すると昨年10月からの観光客入国制限により失われた観光収入は700万ドルになる。そればかりか長期間の鎖国による国の信用度低下は金銭に代えがたいものがある。

北朝鮮が観光業で自国をアピールすることは、決して損はないはずだ。また、こういったことが度々繰り返されると海外の旅行会社も北朝鮮旅行を扱いにくくなるだろう。そういった意味で不可解なアリラン祭の中止だ。