北朝鮮が7日、労働新聞紙上で新型対艦ミサイルや、ステルス艦艇の特徴を持つ新たなミサイル艇の存在を公表したことに、若干の不吉さを感じる。

新型のミサイル艇や新型ミサイルが、どの程度の性能を備えているか現時点ではわからない。韓国メディアの報道内容を見る限り、韓国軍当局は新型ミサイルについて、ロシア製の「3M24ウラン」と同等であると分析しているようだ。それが当たっているとすれば、従来の「KN-01」(北朝鮮版シルクワーム)の射程を50kmも上回るほか、超低空を飛行するためレーダーによる探知も難しくなる。

もとより、それで北朝鮮の戦力が大幅に向上することはない。北東アジアで最も時代遅れの海軍である事実は変わらず、米海軍に対抗するなど夢のまた夢だ。

ただ、客観的にはそうであっても、「現場の空気」への影響はわからない。

新兵器登場が武力衝突を呼んだ歴史

北朝鮮の海軍が抱えている「現場」は、巨大戦力を擁する米中や日中のそれに比べ、ずっと小さなものだ。だからこそ、大国から見ればささやかな装備の更新が、「現場」に大きなバランス変化をもたらす可能性がある。

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新型対艦ミサイルを試射する北朝鮮の艦艇

 北朝鮮海軍にとっての最前線は、軍事境界線の西側海上に引かれた北方限界線(NLL)だ。北朝鮮はこれを南北の境界と認めておらず、韓国海軍との間で何度も砲火を交えてきた。

NLLでの軍事衝突は、南北の軍事力バランスの変化がひとつの要因となっているとの見方がある。

そもそも北朝鮮は、1953年8月にNLLが設定されてからしばらくの間、これについて特段の意義を唱えていなかった。朝鮮戦争で海軍がほとんど壊滅し、NLLの北側海域すらも実効支配する術を持たなかったからだ。

武力衝突の連鎖

しかし1960年代に入り、北朝鮮海軍はまずソ連製の魚雷艇を、続いて高速ミサイル艇を数十隻導入。1973年には、当時の韓国海軍を凌駕するその戦力をもって、NLLの無効を訴え武力示威に打って出る。北朝鮮艦艇によるNLL侵犯はこの年だけで43回に上り、韓国は「西海事態」と呼んで海軍力増強を急いだ。

そうして建造され始めた韓国のチャムスリ級哨戒艇は、1999年の第1延坪海戦と2002年の第2延坪海戦で主役となった。第2延坪海戦では1隻が、北朝鮮の清津級警備艇に搭載された85ミリ戦車砲により撃沈されたが、韓国側の優勢は明らかだった。さらに2009年の大青海戦では、韓国側が圧倒的な状況下で、北朝鮮の警備艇1隻を撃退している。

2010年の哨戒艦「天安」撃沈は、これに対する報復として北朝鮮が強行したものだとされている。この作戦に投入されたのは1990年代に開発されたヨノ級潜水艇だと見られているが、さらに新型のテドンB型半潜水艇が同時に投入されたとの説もある。

これらの例を振り返ってみれば、海軍装備の更新が南北双方の戦略や戦術、そして「現場の空気」に影響を与え、それが武力衝突の連鎖につながっているのではないかと懸念せずにはいられない。

北朝鮮の誇示する新兵器が新たな連鎖を呼び起こし、さらに大規模なエスカレーションにつながることのないよう願うばかりだ。

(取材・文/ジャーナリスト 李策)

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