「エボラは米帝の北朝鮮抹殺策動?」陰謀論に怯える北朝鮮
外国人観光客の誘致のため2013年12月にオープンさせた馬息嶺スキー場(本文とは関係ありません) ©Uri Tours

「入国制限措置の解除はいつ?」未だ錯綜する情報

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北朝鮮は昨年10月23日から、西アフリカで発生したエボラウイルスの国内拡散を防ぐとの名目で外国人観光客の入国を禁止し、海外から帰国した自国民を21日間強制隔離する措置を取っている。

一般の国民はもちろんのこと、大臣クラスに対しても容赦は無い。名目上の国家元首である金永南(キム・ヨンナム)最高会議議長、崔龍海(チェ・リョンヘ)労働党秘書、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力部部長ですら外国から帰国後21日間隔離された。

先週、世界保健機関(WHO)はエボラ出血熱の流行が落ち着きつつあるとして、方向性をウイルス拡散防止からウイルス根絶へと変更した。

国際機関のお墨付きを得た今、北朝鮮が国境を開いても問題なさそうだが、この措置の緩和、解除を巡って相反する情報が飛び交っている状況だ。

【参考記事】
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北朝鮮はエボラ陰謀論を本気で信じている?

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北朝鮮出身のチュ・ソンハ東亜日報記者は、北朝鮮指導部がエボラウイルスに感染することを恐れていることが原因として次のように語った。

?「北朝鮮は自国の幹部が米国訪問時に密かにエボラウイルスに感染させられることを恐れている。彼らが帰国後、金正恩氏に会った時に感染させてしまうかもしれないからだ」

またチュ記者は、労働新聞の昨年9月7日付「エボラはアメリカの生物兵器」と11月7日付「エボラウイルスを広めた張本人は誰か」と題された記事からその手がかりを見つけたと述べた。

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記事では「エボラウイルスはアメリカが生物兵器用に開発したもので、アフリカで試験を行ったことが明らか」だと半ば陰謀論めいた主張を繰り広げている。

ワシントン・ポストは3日、「北朝鮮がアメリカの対話提案を拒否したのはエボラが原因かもしれない」として次のように伝えた。

「北朝鮮とアメリカの六者協議の代表が対話の場をもとうとしたが、エボラにより実行計画に合意できなかった。六者協議北朝鮮代表のリ・ヨンホ外務次官もシンガポールで開かれたアメリカ民間専門家との会談後、21日間自宅で隔離された」

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さらに金正恩氏暗殺をテーマにした映画「ザ・インタビュー」の公開と、オバマ大統領の「北朝鮮は崩壊する」との発言があった。オバマ大統領を「サル」呼ばわりしてみたり、大規模な軍事訓練を繰り広げたりしているが、北朝鮮は本気で「米帝の共和国抹殺策動」を怖がっているのかもしれない。

【参考記事】北朝鮮が空海軍動員し米空母攻撃訓練 オバマ氏「崩壊」発言に反発

エボラ陰謀論より怖い国の信用喪失

北朝鮮を専門に扱う旅行会社にとって、措置がこれ以上長期化すると事業そのものが脅かされかねない。それでダメージを被るのは、貴重な外貨を失う北朝鮮も同じだ。

?中国西安にあるヤングパイオニアツアーズのマネージャー、ローワン・ベアード氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対して「北朝鮮が4月の平壌国際マラソンまでに国境を開放しなければ彼らは巨額の損失を被るだろう」と語っている。

複数の北朝鮮専門旅行会社は入国制限措置が解除されることを見越して、大々的に平壌国際マラソンツアーの募集をしている。昨年の平壌マラソンには世界各国から200人の外国人ランナーが参加しているが、200人の観光客が北朝鮮にもたらす利益は決して少なくないだろう。

得意先の北朝鮮に対して旅行会社がこのような発言をすることは異例のことだ。旅行会社もそれほど切羽詰まっているのだろう。

入国制限措置の長期化で外貨やビジネスチャンス、国の信用が失われつつある。「エボラ陰謀論」よりそっちのほうがよっぽど恐ろしいとは思わないのだろうか。