北朝鮮が、親ロシア国家ベラルーシの大陸間弾道ミサイル(ICBM)用移動式発射台(TEL)を製造する企業に対し、自動車部品を供給していることが分かった。米国の民間安全保障分析企業「ダラス・パーク・プロジェクト」の報告書を、北朝鮮専門メディア「NKニュース」が6日付で引用して報じた。国連安全保障理事会決議により厳格な制裁下に置かれる北朝鮮が、ロシア、ベラルーシとの連携を深めながら、軍需分野での協力を拡大している実態が浮き彫りとなった。

報告書によると、北朝鮮が供給しているのは、高精度の操舵(ステアリング)システム、複雑な電子制御モジュール、ポリウレタン製ホースなどの車両用精密部品で、いずれもICBM搭載用移動式発射台の製造に不可欠なものだという。供給先は、ベラルーシに本拠を置く世界最大級のTEL製造企業とされ、北朝鮮製部品が、同国の戦略ミサイル関連産業の一部を技術面から支えている構図がうかがえる。

国連安保理は、2017年に採択した制裁決議2375号および2397号で、北朝鮮による機械部品、輸送機器関連製品、精密機械の輸出を全面的に禁止している。今回明らかになった取引は、これらの決議に明確に抵触する可能性が高く、制裁網を巧妙に回避した地下経済ネットワークの存在を示している。

一方、NKニュースは、北朝鮮とベラルーシが昨年末、数トン規模の食肉と軍需関連部品を交換する取引を行っていたとも伝えた。ベラルーシの独立系メディア「ジェルカロ」によると、数十万ドル相当の牛肉、鶏肉、缶詰肉、内臓などが、ポーランド企業を経由する形で鉄道輸送により北朝鮮へ送られたという。対価として、北朝鮮側はミサイル発射台関連車両部品を供給した可能性がある。

北朝鮮とベラルーシの接近は、ここ数年で急速に進んだ。昨年10月には、崔善姫(チェ・ソンヒ)外相がベラルーシを訪問し、リジェンコフ外相と会談。これに先立つ同年7月には、同外相が平壌を訪れ、二国間関係の強化を確認している。さらに昨年9月には、中国訪問中のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と金正恩総書記が会談し、金氏はルカシェンコ氏を平壌に招待した。

背景には、ロシアのウクライナ侵攻を軸に形成された「反欧米」枢軸の拡大がある。ロシアは戦時体制の下で軍需物資と人的資源を大量に消費しており、北朝鮮は砲弾やミサイル、兵員を供給する見返りに、食糧や燃料、先端軍事技術の提供を受けているとされる。ベラルーシはロシアの事実上の同盟国として、軍需生産と後方支援を担う立場にあり、北朝鮮との直接協力は、この三国連携の一環と位置づけられる。

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注目されるのは、北朝鮮が「供給側」として軍需サプライチェーンに組み込まれている点だ。従来、北朝鮮は技術や部品を外部から調達する「受け手」とみなされてきたが、今回の事案は、同国が独自に蓄積してきた車両・機械分野の技術力を活用し、他国の戦略兵器開発に貢献している実態を示す。

北朝鮮は長年、中国製大型車両を改造して移動式発射台を製造してきた経緯があり、重量級車両の操舵制御や電子制御技術に関して一定のノウハウを有する。北朝鮮は制裁下で兵器開発を続ける中、代替技術や独自工法を磨いてきた。これがロシア、ベラルーシにとって実用的価値を持つようになったと見られる。

今回の事例は、国連制裁体制の限界も浮き彫りにした。制裁は主に金融・貿易の公式ルートを遮断する仕組みだが、第三国企業を介した取引や、物々交換、現物取引には対応が難しい。実際、今回の肉類輸出もポーランド企業を通じた迂回ルートが用いられており、監視網の隙を突く形となった。

国際社会では、ロシアの戦争遂行を支える「制裁逃れネットワーク」が、北朝鮮、イラン、ベラルーシなどを巻き込みながら多層化しているとの警戒が強まっている。今回の取引は単なる二国間の密貿易ではなく、ロシアを軸とする戦時経済圏の拡張を象徴する動きと言うこともできる。