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「儲けたい、海外に出たい」

北朝鮮では、幼児からまだ結婚していない若者までをひっくるめて「新世代」と呼ぶ。政府は彼らを「愛国、革命を引き継いでいくべき主役」として、彼らに対する思想教育の重要性を強調してきた。

2021年9月の最高人民会議は「青年教養保障法」を採択し、彼らの思想や行動を縛り付ける法的根拠を整備した。だが、当の本人たちは思想教育を聞き流し、国や集団、社会の利益より個人の生活を大切にする。

それを象徴するのが「儲けたい」「海外に出たい」という2つのキーワードだ。

このような傾向を示す北朝鮮の青年層は、職業観においても過去の世代とは異なる様相を呈している。政治的な権力を行使できる職業よりも、お金をたくさん稼いで豊かに暮らせる職業を好む傾向が顕著に現れており、海外に出て自由な雰囲気を体験したいという欲求も強く現れている。

地方はカネ、平壌は経験

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「(今の若者は)どうせ一度きりの人生なのだから、楽をして、やりたいことは全部やって、良い暮らしをしようという傾向が強い」

そう語ったのは、咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)在住の20代の若者だ。そして、こう続けた。

「カネと経済レベルが最も重要な価値の基準になっていて、そんな考えがまるで感染症のように広がっている」

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かつての北朝鮮における立身出世と言えば、兵役を終えて大学に進学、誠実に働き、朝鮮労働党員になって幹部に登りつめるというものだった。しかし、今の若者の考え方は異なる。

「かつては政治的な権力や地位が生活の安定につながり、国家機関の指導幹部(トップ)が最も好まれる職業だったが、今は組織生活(動員)が少なく、儲かる職業、例えば、機関に籍だけ置いて貿易業を営む仕事が好まれている」

清津より経済レベルの高い首都・平壌に住む20代の若者は、若者の間で「一度は海外に出てみよう」という考え方が広まっていると述べた。

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「(貿易)駐在員として海外で働いたり、(派遣労働者として)海外で働く機会の多い特殊機関(外貨稼ぎ機関など)勤務を好む傾向がある」

貧しい地方では、ともかく儲かる仕事が好まれるのに対して、国内で最も豊かな平壌では「外の世界を見てみたい」という好奇心を満たす仕事が好まれる傾向にある。

しかし、海外に出られるのは北朝鮮国民の中でもほんの一握り。

平壌では、他の世界を経験したい青年が徐々に増えており、青年たちは海外派遣の機会が多い情報技術分野や外国語分野に最も関心を示しているという。

経済的な安定が最優先される地方では、いわゆるお金を稼げる職業が、すでに経済的に基盤が整っている平壌では、北朝鮮とは異なる社会雰囲気を直接見て感じることができる職業が好まれているという説明だ。

北朝鮮国民が海外に出るのは至難の業だ。そのチャンスを掴むためにITや外国語など、少しでも海外に出られる可能性の高い分野の職業につこうとする若者が多い。しかし、そこには大きな壁が立ちはだかっている。

大切なのは忠誠する「フリ」

北朝鮮には職業選択の自由がない。就職先は国が割り当てるものだ。個人の能力や専門知識もある程度考慮されるが、最も大きな影響を与えるのは「成分」、つまり身分や家柄だ。

(参考記事:北朝鮮に存在する「上級市民」と「下級市民」隔てる高い壁

しかし最近、変化が生じつつある。平壌のある幹部はこう語った。

「個人の努力だけで希望する職場に配属されるのは容易ではない。カネの力や実家の太さ、コネを総動員しなければならない。かつてならカネと権力さえあれば希望する職場に入れたが、最近では愛国活動の経歴も問われるようになった」

北朝鮮において愛国心は、金正恩総書記、朝鮮労働党、国への忠誠心と同一視されるが、それがいかに篤いかによって、就職先が決まるのだ。

羅先(ラソン)特別市の20代の若者は次のように語った。

「社会的、政治的活動に積極的に参加するフリをしながら、愛国者としてのキャリアを積むために多くの努力をしている」

あくまでも「フリ」であって、本当に忠誠心を持っている若者は少ないと言われている。彼らにとって金正恩氏、党、国はありがたい存在ではなく、自分のやりたいことの足を引っ張る面倒くさい存在に過ぎないのだ。

(参考記事:「勲章などいらない」国家に背を向ける北朝鮮の若者事情

韓国の政府系シンクタンク・統一研究院は、昨年12月に発表した「金正恩時代の北朝鮮の若者たち:順応と自立の間、国家と市場を行き来する」で、イマドキの若者について次のように分析している。

「若者は、国の個人の間の政治、思想的緊張という面で以前の世代と区別される特徴を持つ」
「党と国家に無条件に献身するのではなく、個人の利益のために服従したり、時には形式的な服従にとどまり、それにより国を絶えず緊張させる」