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「児童を重視し、彼らの権利と利益を優先的に保障することは、朝鮮民主主義人民共和国の一貫した政策である。国家は児童の成長と発展に常に深い関心を向け、すべての児童が自分の権利を思う存分行使し、世界に恥じることなく幸せに育つようにあらゆる配慮をする」

北朝鮮の児童権利保障法は、第1章でこのように謳っている。しかし、現実はどうか。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、新義州(シニジュ)市内で見かけた光景をこのように語っている。

「10代の兄妹2人がコチェビ(ストリート・チルドレン)になって、道端で食べ物を恵んでもらい生き抜いている」

本来なら初等学院や中等学院(いずれも孤児院)に入っていてもおかしくない年代だが、いったい彼らの身に何が起きたのだろうか。

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母親のリさんは、中国キャリアの携帯電話を使って、中国や韓国からの送金を北朝鮮にいる人に手渡す送金ブローカーだった。中国にいる人脈を利用して多くの客を集めていた。夫は既に4年前に他界していたが、女手一つで二人の子どもにいい暮らしをさせられるほど儲けていた。

2020年1月、北朝鮮はコロナ鎖国に入り、人と物の出入りが完全に禁止された。多くの人が現金収入の道を絶たれ飢餓に苦しむ中で、一家は相変わらず羽振りの良い様子だった。それが逆に問題を生んだ。何者かに安全部(警察署)と保衛部(秘密警察)に密告され、厳しい監視を受けることとなった。

そして翌年の1月、リさんが脱北者の家族に送金を手渡そうとした瞬間に、保衛部に現場を押さえられた。家宅捜索の結果、中国キャリアの携帯電話、多額の米ドル、中国人民元が発見され、リさんは5年の労働教化刑(懲役刑)を判決を受けた。

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兄妹は母方の叔父の家に預けられた。叔父はリさんの家を売り払って、その現金で兄妹の面倒を見ていたが、やがてカネが尽きて、叔父と叔母が兄妹を巡って頻繁に夫婦喧嘩をするようになった。叔父夫婦の顔色を見ながらの暮らしに耐えかねた兄妹は、そっと家を出た。

2人は家々を訪ね歩き、食べ物を恵んでもらっていたが、それも一日二日が限界だ。皆が皆生活の苦しい中で、そう簡単に食べ物が得られるわけではない。兄妹はやがて餓死する可能性がある。一家を知る人々は、「あまりにもかわいそうだ」と同情している。

初等学院や中等学院に入れない理由について情報筋は言及していないが、叔父夫婦が生きていて、母親も運が良ければ4年すれば出所できる状態で、入れてもらえないのだろう。運良く入れたとしても、未来は暗い。

(参考記事:就職しても差別から逃れられない北朝鮮の孤児たち

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近頃の北朝鮮ではこんな言葉が交わされている。

「ああやっても、こうやってもどのみち死ぬ、だったら太く短く生きよう」

基本的人権も私有財産が保障されておらず、権力者のさじ加減ひとつで全財産はもちろん、命すら奪われてしまう。経済活動の自由度が極端に低く、まともに法律を守って商売していては全く儲からない。自然と違法行為に手を出すことになるが、いつ捕まるかわからない。

(参考記事:「犬野郎!カネ返せ!」北朝鮮政府に”繁盛店”を奪われたオーナーの叫び

そんな状態だったのが、市場抑制策に伴い、普通の商売すら難しくなった。勤め先からもらえる月給は大幅に引き上げられたものの、普通の暮らしを営むには全く足りない。

子どもも大人も最低限の暮らしすら保証されない中で、国は最高指導者や朝鮮労働党への忠誠心を求め、様々な名目で勤労動員に借り出し、税金外の負担を搾り取る。こんな無茶苦茶な状態はいつまでも続かないだろう。人々の不満に耐えきれず、市場抑制策が緩和され、やがて誰もが自由に商売できた2010年代の状況に戻っていくことだろう。

(参考記事:金正恩氏が父の大失政「貨幣改革」のマネごとをする謎