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北朝鮮の金正恩総書記が、先日の朝鮮労働党中央委員会第8期第19回政治局拡大会議で打ち出した「地方発展20×10政策」。首都・平壌への偏重が著しい投資を地方にも広げて経済の発展を図り、地方の人々の生活を向上させるというものだ。「20✕10」とは、毎年20の市や郡に現代的な工場を建設し、10年以内に経済を活性化させることを意味している。

(参考記事:金正恩氏、党政治局拡大会議で「地方発展20×10政策」を強調

だが、地方政府の幹部らは、その実効性に疑問を呈している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の幹部は、「地方に工場がないから人民が貧しいのか」と指摘した。

平安北道の薪島(シンド)郡には葦を使った製品の製造工場に加え、食料品工場、被服工場などがある。しかし1990年代後半の「苦難の行軍」以降、予算が調達できずに稼働が止まり、味噌や醤油ですら供給できていないと、この幹部は述べた。なお、薪島郡は黄海に浮かぶ島からなり、中国との行き来が容易な場所だが、その地の利を全く生かせていないようだ。

朝鮮労働党中央委員会(中央党)に非常設機構として地方工業指導課が設置され、地方発展20✕10政策を推し進めるというが、結局、国の予算が中央産業、中でも軍需産業に集中的に投資される状況に変化はなく、地方の経済発展は難しいというのが幹部の見方だ。

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北朝鮮は朝鮮戦争後、重工業を優先的に発展させ、軽工業と農業を同時に発展させる路線を打ち出した。鉄鋼産業、化学産業、軍需産業は中央産業、生活と直結する食料品工場や被服工場は地方産業として、前者ばかりに投資を行ったため、地方が発展できなかった。

なお、中央産業は、原材料の調達、生産物の需給が有利な地域中心に配置されていると言われている。例えば、火力発電所は炭田のある平安南道(ピョンアンナムド)の北西部、化学産業と肥料産業は石灰鉱山のある平安南道の順川(スンチョン)と咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)にある。

平安南道の幹部も、安州(アンジュ)には労働新聞の新聞紙を生産する121号工場や、軍需工業を司る第2経済委員会の傘下にあるポンプ工場には原料や資材が供給されているが、食料品工場や被服工場には供給されず稼働が止まっており、地域住民に靴や衣類を供給できていないと現状を語った。

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結局、工場というハコモノの建設にばかり投資が集まり、最高指導者(金正恩氏)の業績アピールにしかならないのではないかという声が上がっているとのことだ。また、地方の経済運営権を中央に取られてしまうのではという懸念の声も上がっている。

(参考記事:金正恩の肝いり「巨大リゾート」がゴーストタウン化している

韓国・東亜大学の姜東完(カン・ドンワン)教授は、デイリーNKへの寄稿で、「世界はAがI主導するグローバル産業へ構造再編が行われつつあり、その成功如何に国家の存亡がかかっている中、地方に数個の工場を建てて、生活必需品を供給させるだけというのは、時代への逆行」だと批判した。

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姜教授が一例として挙げたのは、金正恩総書記が現地指導を行った江原道(カンウォンド)金化(キムファ)郡の地方産業工場で、木の実のジャム、ジュース、ゴシュユの石鹸などを生産している。

第4次産業革命時代を迎え、韓国は半導体、海洋プラント、AI、ロボットなどに投資しているのに、北朝鮮は地方の特産品を作り出すのがやっとだ。このような「成功事例」を大々的に成功していることがむしろ政策が見逃している点を浮き彫りにしていると姜教授は指摘した。

以前、ある商人は「政府が何もしないことが一番の経済政策」だと語った。余計な経済計画で民間の努力を阻害するのは、むしろ経済発展を妨げることになるということだが、まさにその道を行っているのが、今の北朝鮮の政策だ。

(参考記事:金正恩氏が父の大失政「貨幣改革」のマネごとをする謎