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北朝鮮は、農村における住環境の改善を目標に掲げ、農村住宅の建設を推進している。金正恩総書記が旗を振る、タワーマンションなど大規模な再開発工事が首都・平壌にばかり集中し、地方の不満が高まったことを意識してのことだと言われている。

しかし、その住宅建設が農民を苦しめている。「税金外の負担」と呼ばれる金品の供出や、勤労動員など、負担が現場に丸投げされるからだ。また、収穫した農産物の分配が適切に行われず、穀物の買い取りは市場価格よりはるかに低い国定価格で行われるため、農民は充分な収入を得られない。

農民はトンジュ(金主、高利貸し)から春に穀物を借りて、それで肥料など農業に必要な資材を買い込むが、秋の収穫後に2倍にして返さなければならない。

(参考記事:実りの秋に借金取りに追われる北朝鮮の農場幹部

永遠に貧困から抜け出せない農村での暮らしを嫌い、密かに都会に逃れる農民も少なくない。また、江戸時代の逃散のように村を捨てて、国のコントロールが効かない山の奥深くに隠れ住み、狩猟や採集、小規模農業で生きる人もいる。

機械化の遅れた北朝鮮の農村では、労働力の逸走は生産性の低下に直結する。当局は、都会の若者を「嘆願」したことにして、農村部に送り込んでいるものの、あらゆる手を尽くして逃げ帰る者も少なくない。

(参考記事:送り込まれた若者が次々に逃げ出す北朝鮮農村「嘆願」事業の現実

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デイリーNKは、平安南道(ピョンアンナムド)の農民Aさんにインタビューを行い、希望が全く見えない北朝鮮の農村の現状について尋ねた。

ー当局は農村住宅の建設に力を入れているが、住環境は良くなった?

Aさん:家を建て続けている。それも畑を潰して。土地を少しでも開墾して穀物生産目標を達成しろと言いながら、畑を潰して家を建てるのは果たして正しい政策なのか。

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住宅は個人(入居者)が全て仕上げなければならない。(編集部注:北朝鮮で新築住宅はスケルトン状態で引き渡される。)オンドルも入っていない。コンクリートの建物にドアを設置し、窓にビニール膜を貼った状態で入居した。お金がなければセメントの床に新聞紙や布団を敷いて暮らさなければならない。

そんな家を100軒建てるより、入居してすぐに(かまどに)火を入れてご飯が炊ける家を1軒建てたほうが良いのではないか。今は速度戦(編集部注:ともかく速く進めろというキャンペーン)で家を建てまくっているが、人がすぐに暮らせるような家を建ててほしい。

水道も入居者が自費で人を雇って設置しなければならない。さもなくば、住民が昼間働いて、夜に自分で工事しなければならない。家の前と周囲の道は「タコ」で叩いてならして、大通りと繋がるところだけセメント舗装するが、非舗装の道は雨がふるとデコボコになる。

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(参考記事:「蛇口だけの水道、水洗NGのトイレ」金正恩住宅のトンデモ実態

ー昨年の穀物生産目標を達成したというが、農家の食糧事情は?

Aさん:穀物の生産目標を達成したというが、昨年の春に約束した通りの分配がうまく行われなかった。一般農民の食料事情はさらに厳しくなった。

ー今年の農業生産はどうなる?

Aさん:自然災害がなく、肥料がうまく確保できればよくなるだろう。昨年のように春の全国的な農村支援総動員、夏の草取り、秋の稲刈り総動員戦で人員が確保されればうまくいくと予想している。

ー現在、農場が直面している困難は?

Aさん:農民の数が非常に不足しており、労力動員と農村支援に頼らざるを得ない状況だ。寒冷地苗床、燃料、耕運機、肥料も不足しており、農場は厳しい状況が続いている。

ー農業の生産性向上のために最も必要なものは?

Aさん:農村の灌漑だ。

ー農業技術教育は適切に行われている?

Aさん:技術教育は作業班や分団ごとに毎夜に1時間、そして管理委員会で1カ月に1回行われる。しかし、すべて形式的で、以前に教わったことを繰り返すだけだ。農村綱領が劇的に変わったというが、実感できていない。農民たちは疲れたとうめき声を上げている。

ー農村生活で最も大変なことは?

Aさん:水道水が出ないことだ。冬は共同の蛇口やポンプが凍ってしまい、女性たちが汚い水を汲んできて沸かしてポンプにかける。あるいは、川の水を汲んできて沸かして飲む。飲み水確保が最も困難だ。電気など夢のまた夢だ。

ー今は苦しくともいつかはよくなるという期待はあるか?

Aさん:払え、出せと(当局から)言われることが増えるだけで、期待も希望もない。

ー新年の願いは?

Aさん:当局は農村住宅建設にお金や資材、後方物資を出せという。税金外の負担が大きすぎるので、せめてそれだけは改善してほしい。また、幹部は農産物を横流しせず、農家の人々の年間分配を規定通りに行ってほしい。