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北朝鮮の今年の農業の作況については様々な見方がある。全国的な状況は不明ながら、一部からは豊作で、野菜や穀物の価格が下がっているとの情報が伝わっている。

まだ全体を判断する段階ではないものの、過去数年にわたって飢えに苦しんできた人々にとっては、じゅうぶんとは言えなくとも、少なくとも餓死を心配する程度ではなくなったのは喜ばしいことだろう。

(参考記事:白菜の豊作で「餓死せずに済んだ」北朝鮮の人々

協同農場では収穫と脱穀が進み、収穫量を判断する決算分配が行われているが、喜ぶ一般市民とは異なり、農場幹部は暗い顔をしている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、甑山(チュンサン)郡の農場の作業班長たちは、トンジュ(金主、闇金業者)に出くわさないように身を隠すのに必死だという。借金返済を催促されるからだ。

かつては、協同農場で必要になる営農資材や資金は国から供給されていたが、北朝鮮の経済システムが破綻した1990年代以降、農場ごとに自主調達が求められるようになった。その財源づくりのため、国に納めるべき穀物を市場に横流しして現金を稼いだり、トンジュから資金を借りて秋の収穫後に穀物で返済するのが一般化している。

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本来、返済は決算が済んで農民への分配が終わった11月末にすることになっているが、
トンジュから早く返済してくれと催促されるようになったという。

甑山郡の農場では現在、刈り取った稲の脱穀で大忙しで、決算分配は11月末か12月初めに行われる。それなのに、当局が「決算分配は終わった、今年は豊作だ」と宣伝したせいで、借金取りが集まってきたのだ。農場幹部たちは呆れ返っているという。

(参考記事:「今年の農業は大成功」と宣伝したくてたまらない北朝鮮

平安北道(ピョンアンブクト)龍川(リョンチョン)郡の農場でも、稲の刈り取りは終わったが、脱穀はまだ終わっていないと、現地の情報筋は伝えた。しかし、当局は農民にコメを分配する様子を宣伝しており、農場幹部はため息をついている。トンジュが返済の催促にやってくるからだ。

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「今月に入って最高尊厳(金正恩総書記)の指導のおかげで豊作になったと、メディアは模範農場を持ち上げている。他の農場も模範農場のように国に納めるべき穀物の計画(ノルマ)を超過達成しなければならず、そうすれば返済用の穀物が不足しうることをトンジュたちはよくわかっているため、返済の催促にやってくるのだ」(情報筋)

模範農場は豊作となって、国の決めた計画以上の収穫量となったことにされているが、実際の数字より水増しされていることが考えられる。そもそも北朝鮮の農業は上から下まで虚偽報告だらけだ。トンジュはそれを知っているため、自分の取り分を早めに確保しておきたいのだ。

(参考記事:農民も借金取りも途方に暮れる北朝鮮の農村の冬

一般的に、春の田起こしに必要なトラクターのディーゼル油は穀物換算で3トン、ビニール幕や肥料の購入費用としては必要になるのは1000ドル(約15万円)分の穀物で、秋の収穫後にこれを2倍にして返済する。収穫量全体の数パーセントに達するが、正確な割合は、決算分配で収穫量の集計が終わるまでわからない。