北朝鮮は新型コロナウイルスの国内流入を防ぐためとして、3年半以上にもわたり国境を封鎖。これにより深刻な経済難に陥った。現在は国境が徐々に開かれ、中国などとの間でヒトとモノの行き来が再開されているが、人々は依然として景気回復を実感できず生活苦の中にある。
コロナ明けの今、北朝鮮国民は何を期待し、願っているのか。韓国デイリーNKは、北朝鮮国内に住む複数の市民にインタビューを行った。
「新年には、教員の待遇が良くなって欲しい」
江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)の初級中学校(中学校)で教師を務めるキムさん(40代男性)が口にした、新年の願いだ。
教員の月給はわずか3000北朝鮮ウォン(約51円)。これでは家族を養うどころか、コメ1キロすら買えない。4人家族を養うには、1ヶ月50万北朝鮮ウォン(約8500円)かかると言われている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「教員の生活レベルが低すぎるため、生徒に勉強を教えるよりも、生活の心配をしなければならず、授業時間にも集中できないことがある」
北朝鮮では、一部で月給が数十倍に引き上げられているとの報道があるが、国家的に重要とされる企業や機関に限られ、教師の月給が上がる見込みはない。暮らしていくには家庭教師をしたり、保護者からワイロを受け取ったりするしかない。
(参考記事:【北朝鮮の教師インタビュー】生徒の親からの「ワイロ」に依存した生活もコロナで破綻)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面それなら、児童や生徒は何を望んでいるのだろう。
「今年は子どもの『計画と善行』、買い取り計画が減ってほしいというのが願いだ」
そう語ったのは、南浦(ナムポ)に住むパクさん(40代男性)だ。ここで言う「計画」「善行」とは様々な供出ノルマのことを指す。北朝鮮の学校は児童・生徒に対し、古鉄やハギレなどのリサイクル品、動物の革の供出、農村などでの勤労動員、現金の支払いなどのノルマを課している。子どもを「人質」に取られた保護者は、自分の子どもが教師からいじめられたり冷遇されたりするかもしれないとの恐怖感から、無理をして学校の要求を受け入れる。
(参考記事:北朝鮮の少年少女を苦しめる「気持ち悪い」冬休みの課題)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
さらに、本来は無償で配布されるはずの教科書も、実際は有料となっている。学年が上がって必要がなくなれば、市場で売り払いいくらかのカネに替えられるが、学校は予算確保のために、児童・生徒に売った教科書を学年の終わりに回収し、次の学年にまた販売している。
こうした現状に、保護者は呆れかえっている。
「学校からあれこれカネを払わされることが多すぎるので、今年はもうやめてほしい。昨年は授業に必要な費用全般はもちろん、学校運営のための各種費用とコンピューター近代化費用まで負担させられ苦しかった」(パクさん)
やはり学校に通う子を持つリさん(50代女性)は、 次のように語った。
「今年の望みがあるとすれば、子どもたちが農村支援や鉄道、道路の補修作業に動員されることが少し減ればいい。ここ(北朝鮮)では大学入学の割り当てを取り付けるには家庭の経済力を総動員しなければならないが、今年はその相場が少し安くなればいい」
(参考記事:入学から卒業まで「ワイロまみれ」の北朝鮮の大学)