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朝鮮では伝統的に教師の地位が高い。儒教の影響で学問を重要視する傾向が強く、教える教師も、両班(ヤンバン、貴族階級)だったからだ。

ただ、ここ最近は大きな変化が生じている。韓国の教師はかつて保護者から当たり前のように「寸志」、つまり付け届けを受け取っていたが、もはやできなくなった。その一方、北朝鮮では1990年代の「苦難の行軍」以降、配給をもらえなくなった教師たちは、児童・生徒の保護者からの援助、またはワイロに頼って生きて行かざるを得なくなった。

デイリーNKでは、平安北道(ピョンアンブクト)在住のAさん、咸鏡北道(ハムギョンブクト)在住のBさん、両江道(リャンガンド)在住のCさんの3人の教師を対象にインタビューを行い、教師の生活実態に迫った。

まずAさんは、「コロナ前とは比べ物にならないほど生活が苦しくなった」として、「もはや教員をやめて生活の最前線に飛び込まなければならない」と述べている。

「コロナ前には保護者からの助けだけで、4人家族全員が暮らすことができた。クラスの熱誠者(模範生)の保護者はもちろん、熱誠者ではない生徒の保護者からも、1カ月にコメ5キロをもらえた。現金が必要な場合には、保護者に頼めば解決してくれた。また、保護者から要請を受けて生徒を(家庭教師として)教えれば、ギャラももらえ生活の心配はなかった。他の人々から随分羨ましがられたが、今は保護者らもその日暮らしをしている状況で、助けて欲しいとも言えない」

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Bさんは「経済的な困難で1日に何十回も学校をやめたいと思う」と述べ、教育の発展を強調しながら教師の処遇改善に関心のない当局に不満をのぞかせた。

「苦しい中で皆勤賞を取っても1グラムのコメも分けてもらえない。逆に『能力のある資質のある教師になれ』『教員としての本分を果たせ』などと言われる。そんな状況で学校に出勤したい気持ち、生徒を教えたい気持ちになれるだろうか」

Cさんは最近、同僚が相次いで学校を去っていったという。コロナ前には配給なしでも生きていける「オイシい」仕事だったが、今では生きていくのが精一杯で、「生活の苦しい仕事」との認識が広がっているという。

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「最近は幹部の子どもやトンジュ(金主、ニューリッチ)の生徒の担任にならなければまともに食事が取れないほど、生活レベルが落ちた。しかし、国は教師の生活対策を取らないので、これからどうやって暮らしていれば良いかわからず、ため息しか出ない」

(参考記事:「教壇で餓死しろというのか」追いつめられる北朝鮮の教師たち

では、教師たちはいかに生活を成り立たせているのだろうか。

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Aさんは、教育当局が生徒の家庭に様々な「物納ノルマ」を課す際に、少し多めに伝えて余った分を商人に売り、生活費の足しにしている。

「時々、商品を売ろうと路上に密かに立つのだが、商売の経験がないせいか、一度もまともに売れたことがない。今まではなんとか耐えてきたが今後が問題だ。配給がまともにもらえるようにならない以上、どうやったら教員が暮らしていけるかわからない」

(参考記事:無理やりワイロを徴収して「特典の押し売り」をする北朝鮮の高校教師

Bさんは、冠婚葬祭のある家で餅つきを行うなど、どんな仕事でもいとわずにやっている。現金が急に必要になれば、保護者を訪ねて助けて欲しいと頼み込むこともある。

「コロナ前の日常に戻ることを待ちわびて暮らしているが、やれることはなんでもやった。どうか教員が生活の問題に気を使わなくても済むように、生徒の指導にだけ集中できるように配給だけでも実施して欲しい」

(参考記事:「コメを5キロくれ」生徒に乞うた北朝鮮の教師、摘発され吊し上げに