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晩秋の朝鮮半島の恒例行事と言えば、何と言っても「キムジャン」だろう。冬の間の貴重なビタミン源となるキムチを大量に漬けるもので、家族総出、時には隣人どうしで助け合って行う。

しかし、韓国では以前ほど盛んに行われなくなった。食品会社のテサンが行った2020年の調査で、「キムジャンをやらない」と答えた人が56.2%に達した。そのうち6割は購入でまかなうと答えた。経済的、体力的な負担が大きい一方で、以前ほどキムチを多く食べなくなったからだ。

一方、食糧難に苦しむ北朝鮮では事情が違う。何百キロという大量の白菜を買い込み、大々的にキムチを漬け込み、厳しい冬を乗り切る栄養源にする。それだけあって、野菜の価格は社会に大きな影響を与える。一昨年と昨年は野菜の作況が悪く、窃盗事件が相次ぎ、特権層向けに野菜を緊急輸入するなどしていたが、今年は野菜が豊富に採れたようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:「キムチシーズン」を迎えた北朝鮮で多発する野菜泥棒

朝鮮労働党創建日だった今月10日、北部の両江道(リャンガンド)では一斉に野菜の収穫が行われたと現地の情報筋が伝えた。創建記念の行事には幹部や学生だけが参加し、工場、企業所の労働者は「野菜の秋戦闘」に参加した。

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かつての北朝鮮では、全住民を動員して集中的に収穫する野菜の秋戦闘が毎年行われたが、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の後、野菜の栽培面積が大きく減り、残った野菜畑でも病害虫の被害が深刻で、野菜の秋戦闘は自然消滅した。

これが復活したということは、今年の野菜栽培がうまくいったことを意味すると情報筋は説明した。現在、市場では白菜1キロが1000北朝鮮ウォン(約170円)で売られているが、半額程度まで値下がりすると見られている。そうなれば、去年の3分の1だ。

この地域では半年分の食糧をまかなうとされるキムジャンキムチだが、4人家族が充分な量を食べるには300キロの白菜が必要になる。白菜価格が半分になっても、15万北朝鮮ウォン(約2550円)もかかる計算になり、経済難に苦しむ人々にとってはかなりの負担だ。

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昨年は野菜の高値でキムジャンを諦めた人も多かったが、今年の白菜は出来が非常に良く、貧困に苦しむ人であっても、キムジャンができるほどだという。

ただ、美味しく作るのに欠かせない材料は依然として高値だ。別の情報筋によると、トウガラシの粉は1キロ3万7000北朝鮮ウォン(約629円)、にんにくは1万8000北朝鮮ウォン(約306円)もするため、白菜の量に合わせて買うのは困難だ。

逆に、白菜価格が高く、キムジャンをあきらめた人の多かった一昨年は、需要が減ったことで、トウガラシ価格が大暴落した。

(参考記事:キムチ作り真っ盛りの北朝鮮でトウガラシ価格が大暴落

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ご飯がすすむ味の濃いキムチは期待できなくとも、人々の表情は明るい。情報筋の知人は、コロナ禍になってから一度もキムジャンができずにいたが、4年ぶりにできることとなり、忙しそうにしているとのことだ。

春窮期の今年春には、各地で餓死に追い込まれる人が出るほど食糧不足が深刻だったが、初夏の麦の収穫から始まり、ジャガイモ、トウモロコシ、コメ、そして野菜と収穫が行われ、食糧状態が徐々に緩和した。トウモロコシやコメの作況については見方が割れているが、北朝鮮の人々は最終的な収穫量がどうなるか、祈るような気持ちで見守っていることだろう。

(参考記事:金持ちも餓死「希望拷問」に苦しむ北朝鮮の人々