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北朝鮮の今年の農業生産量を巡っては様々な見方があり、現時点でその全体像を判断するのは時期尚早だ。しかし、「良好だ」との声が国内から聞こえてくるのは事実だ。

現在、稲とトウモロコシの収穫が大々的に行われているが、各農場は農民に収穫量の報告を急がせている。それには、当局のある意図が隠されていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

北西部の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、現地では稲刈りが終了し脱穀作業が行われている。例年ならこの作業の終了後に「決算分配」をすることになっている。これは収穫量、予算などを総和(総括)するものだが、現場は脱穀が終わってもいないのに決算分配を急ぐように急かされている。これは中央からの指示に基づくものだ。

どうやら中央は「豊作だった」とのプロパガンダをしたいようだと、情報筋は見ている。

「台風被害を受けた地域を除くほとんどの地域でまあまあ豊作だったと言いたいようだが、脱穀はまだまだ終わっていない。決算分配を急がせるのは、そのためのようだ」

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(参考記事:凶作続きの北朝鮮農業、打開策は「ホラ防止法」

実際、北朝鮮の国営メディアは、収穫の成果が素晴らしかったのは、主要穀倉地帯に農業機械を送り、浸水した協同農場に直接出向いて視察して対策を立てた金正恩総書記の賢明な指導があったからだと宣伝している。だからといって、1カ月も決算分配を前倒しにする今回の指示に、現場からは「理解できない」(情報筋)との声が上がっている。

北朝鮮では、収穫量の3割を国に納め、7割を農民の取り分とするのが原則となっている。ただ農業にも計画経済を適用しているため、計画量(ノルマ)の分を国が持ち去り、残りを農民の取り分とするのが慣例だ。そのため、実際に農民が得られるのは収穫量の3割にも満たない。そこから借金を返せば、農民の手元に残るものはあまりない。

(参考記事:農民も借金取りも途方に暮れる北朝鮮の農村の冬

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咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋も、昼夜を分かたず脱穀作業が続いているのに、決算分配を早くせよとの指示が下されたとぼやいている。

道内では洪原(ホンウォン)、金野(クミャ)、定平(チョンピョン)の複数の農場がモデルケースとして選ばれ、地方政府の幹部までが現場に出向いて、決算分配を急がせている。

「過去数年間、農業がうまくいかず農民は粥をすすって延命してきたが、天気のお陰で偶然に豊作となったので、当局は騒ぎ立てたくてたまらないようだ」(情報筋)

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中身のないプロパガンダに力を費やすより、非効率的な集団農業より、農民のやる気を引き出すインセンティブ制度を充実させる方が、金正恩氏の目指す農業生産量の向上に役立つはずだ。しかしプロパガンダありきの社会体制であるため、そこにはなかなか目が向かないようだ。

(参考記事:北朝鮮、農民のインセンティブ制度を拡充も成功するか未知数