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白頭山を源とし、北朝鮮と中国との国境を流れ、黄海に至る鴨緑江。その河口付近にはかつて、数多くの北朝鮮国境警備隊の警備艇がいた。しかし、最近になってその活動量が激減しているという。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、鉄山(チョルサン)に駐屯する海軍12戦隊傘下の海岸警備隊52艇隊の所属の警備艇1隻、新義州(シニジュ)に駐屯する国境警備隊の警備艇1隻と合わせて2隻しか運用されていない。

コロナ前の2019年には5隻の警備艇が運用されていたが、今では残りの3隻は全く活動していない。なぜ、2隻しか運用されていないのか。その理由を情報筋は次のように明かした。

「コロナ前、国境警備隊は小さな船を使って密輸する人から燃料を押収したり、ワイロを搾り取ったりして警備艇の運用資金を100%調達していたが、コロナで国境が閉鎖されて以降は儲けが減り、運用を縮小した」

国境警備隊の仕事は公務であるにもかかわらず、予算は国から出ない。国にその能力がないからだ。それをワイロで補っていたのだ。これはここに限った話ではなく、各地の国境警備隊や国境沿いの安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)も同じだ。

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別の情報筋によると、密輸船1隻あたりの年間のワイロの額は3000ドル(約41万8000円)。これさえ払えば、海に出て密輸ができていた。海軍も事情は同じで、ワイロで燃料、部品、個人の生活に必要な物品を購入していた。

(参考記事:「飢えた兵士」が民家を襲い…北朝鮮「特殊部隊」のやりたい放題

海軍はまた、2017年に国連安全保障理事会で採択された対北朝鮮制裁決議2397号が禁じている漁業権の販売も、中国の漁師を相手に行っていた。

密輸を取り締まる名目で配属されている警備艇が、密輸業者からのワイロで運営され、中国の漁師が北朝鮮の領海で操業するのを、北朝鮮の警備艇が保護するという奇妙な光景が繰り広げられていたのだ。北朝鮮という国は多かれ少なかれ、ワイロを生むこうした違法行為の積み重ねで回っているのである。

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(参考記事:ワイロで回る北朝鮮経済…企業と役所の微妙な関係

そして国境封鎖が緩和され、貿易も徐々に再開された今、国は貿易のすべてをコントロールしようと目論んでいる。もしそんな体制が完成すれば、国境警備隊の運用がいっそう行き詰るだろう。

しかし、密輸が経済に組み込まれているこの地域だけあって、すでにほころびが生じているようだ。国境警備隊や海軍がまともに運用されるようになったとしたら、それは再び密輸が横行しているという意味になる。

(参考記事:密輸横行で骨抜きになる北朝鮮の「貿易独り占め政策」